毎年書いている福知山線脱線事故の記事。
昨年に続いて今年も慰霊祭が中止されたほか、マスコミでの取り上げ方も今年はかなり少なかった気がします。
コロナの影響もあるし、16年という年月の問題もありますし。
ただただ同種の事故が今後は起きないことを祈るばかりです。
福知山線脱線事故後にJR西日本に入社した人の数は全社員のうち56%を占めるそうです。
高卒の現業職で今年入社した人は福知山線脱線事故当時は2歳ということになりますから、話としては福知山線で何があったのかは知っているでしょうけど、リアルタイムではないので実感に乏しいかもしれないですね。
事故当時にJRに在籍していた人の中には、福知山線での事故の衝撃が大きすぎて体調を崩して会社を休んだり入院した人も多かった。
私の知り合いで当時は駅勤務をしていた人も入院していましたしね。
その人は元は京橋電車区で運転士をしていて、事故現場を何度も運転していたからショックが大きかったのかもしれません。
そういった方に比べて福知山線脱線事故のことを目の当たりにしていないJR西日本の56%の社員は、いくら会社側が教育によって事故のこと、そして安全のことを教えようとしても、どうしても他人事として捉えてしまうのだろうと思います。
これはJRに限らず各社とも、社員の大きなミスによって起こった様々な事故を伝えようとしても、どうしても他人事としか受け取れないし、「自分はそんな事故は起こさないよ」とどうしても軽く考えてしまいがちですしね。
当時のJR西日本は社員への締め付けが厳しかったと言います。
日勤教育なんて言葉がよくマスコミでも登場しましたが、教育というよりは厳罰主義だったようですし。
1:29:300の法則(ハインリッヒの法則)でいうところの29や300に相当する部分についても、教育だったり共有ではなく厳罰を与えることで、運転士や車掌への過度のプレッシャーからあの事故につながったという見方もあるし
※1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常(ヒヤリ・ハット)が存在する
これも今までに何度も書いてきましたが、私が勤務していた会社でもこの300に相当する部分に対してもかなりのプレッシャーが与えられてきたし、29に相当する部分に関しては配置転換や異動が常になっていたから、過去のJR西日本と同じ状態だったと思うし、今現在では改善されていることを祈るばかりだけどどうなっていることやら。。。
ただこの事故以降はATSなどの保安設備の設置が加速されたのは間違いないし、運転士のミスをカバーできる体制になったのは良いことです。
でもそれらの保安装置が運転士への新たなプレッシャーになっているのも否めない事実だし。
これはなかなか分かってもらいにくいかも。
新しい装置が導入されたり設置個所が増えるたびにプレッシャーも増加していくのです。
例えば60km/hを超える速度で進入するとATSによって自動的にブレーキがかかるとします。
このATSを動作させれば運転士は懲戒の対象になる。
すると運転士は55km/hくらいでしかこの区間を運転できなくなるのです。
万が一速度計を信じて60km/h以下で進入したとしても、ATSによる判定では60km/hを超えていたとしてブレーキがかかってしまうことが往々にして起こりうるのです。
その区間が近付くと運転士は神経をピリピリしながら運転するようになる。
保安装置の設置個所が増える=ピリピリしながら運転しなければいけない箇所が増える。
結局は新たなプレッシャーの出現に他ならないのです。
じゃあその区間は速度を落として走ればいいだけだろ?
ダイヤ(運転曲線)は最高速度より2km/h低い速度で設定するのが一般的で、一部の区間をそれ以上に下回る速度で運転すれば、他の区間で遅れた分を取り返す必要が出てくる。
これがまた大変なんです。
そう簡単に遅れを取り返せなくなっている。
実質的に遅れる以外に手はないという区間も存在しましたしね。
なのに遅延すればするで乗客からのクレーム、上司からの叱責もあるので運転士はプレッシャーを感じながら運転することが多くなる。。。
そうなると前方監視者だけを乗せた自動運転化しかないのかもしれないです。
福知山線脱線事故は保安装置から見ると、古い鉄道から新しい鉄道へのターニングポイントになった。
でも鉄道会社から運転士へのプレッシャーに関しては、事故前より厳しくなったように思います。
あの悲惨な事故が二度と起こらないために運転士は規則の順守を、そして鉄道会社は運転士へ過度のプレッシャーをかけないようにお願いしたいです。