踏切障害物検知装置(以下 障検と略します)はご存知の通り、踏切が動作しているときに踏切内に取り残されたモノを検知して運転士に知らせる装置です。
元々は踏切内に取り残された自動車との接触を避けるために設置された装置で、特殊信号発光器の明滅によって運転士に知らせるもので、ATSと連動しておれば進行してくる列車をATS制動によって強制的に停止させます。
最近は三次元レーザーレーダ式の障検を採用する踏切もあって、自動車だけではなく踏切内に取り残された人も検知できるようになったいます。
従来の光センサー式では光線(赤外線やレーザー光線)を遮らない位置に人や自転車がいた場合は検知できず、それに対して三次元レーザーレーダー式は踏切全体をカーバーできるために小さなモノでも検知しやすい特徴があります。
ただし私が在職中に実証実験で導入された踏切では、踏切遮断時間がラッシュ時間帯は相当長いために踏切動作中に渡る人が多く、朝8時前後は障検が動作しっぱなしになって列車運行に支障が出ることから三次元レーザーレーダー式をあきらめて元の光センサー式に戻したなんてこともありました。
これまでに何回か使い回ししている画像で申し訳ありません
一般的な光センサータイプの障検は図のような光(赤い線の部分)を出しており、この光線を遮ることで障害物があると判断して動作します。
ただし列車が踏切を通過する時にもこの図のように斜めの光を出したいると、列車が障検動作の原因となりますので
図のように斜めの光線は出さないようにして列車の通過時に障検が動作しないようにしています。
ところがちょっとしたタイミングのずれから、列車の通過に際して障検が動作することが意外と多く発生します。
列車が踏切に近付くと障検の斜めの光線を出さなくする地点は、おおむね踏切接近の1~2秒前に当たる地点です。
その地点を列車が通過するときに踏切の斜めの光線を停止するようになっていますが、その地点は当然ですが上下線ともに設けられています。
そして斜めの光線を再び出す地点も同じように設けられています。
それならば本来は列車が踏切を通過するときに障検は動作しないはずなのですが、かなりの頻度で動作するのです。
それは踏切の直近地点で列車同士がすれ違う時に起こります。
ちなみに列車同士がすれ違う時に障検が動作することも、私がいた会社では「離合負け」と言っていました。
離合列車の最後部が踏切を抜け、まさしく(一般的に言う)離合負け防止のために気笛を吹こうとした瞬間に障検が動作するのです。
障検とATSが連動している踏切でこの離合負けが起きると、その瞬間にATS制動が動作して非常ブレーキまたは常用制動の全制動が入ります。
それこそノッチを入れているときにこの状態になると、車内で立っている人は吹き飛ばされそうになります。
障検の斜めの光線の「入」「切」のタイミングによるものだと聞いたこともあるのですが、離合列車の最後部が踏切を抜けた瞬間に動作することが多いので、踏切内には障害物が何も無い時に障検が動作するということになります。
他には車体に当たった太陽光が反射して起こるなんてことも聞いたことがありますが、私が運転士をしていた25~26年の間に修正されることはありませんでした。
今は修正されてすれ違う時に障検が動作しないようになっているのかもしれませんが。