ダイヤ改正に絡んだ話をもう一つしていきたいと思います。
あくまで私が在籍していた会社の乗務区の話ですので、他社だったり、同じ会社でも別の乗務区だとまったく事情が異なる可能性が高い点はご留意ください。
ダイヤ改正が発表されるとまず最初に行うのが行路表づくりです。
私がいた乗務区ではワンマン路線以外は運転士も車掌も同じ行路で乗務していたので、行路表も運転士と車掌で共通です。
この行路表づくりは基本的には本社から提示されたものがベースとなりますが、乗務区の労組・職場委員の班長と副班長が主体となって組み替えていきます。
それまでの行路表で修正してほしいと要望のあった個所(休憩時間や出退勤時間の修正などさまざま)を考慮しつつ組み替えていきます。
よく話に上がるのが、他の乗務区で休憩となる行路を極力避けてほしいというものがあります。
乗務時間の関係から途中で休憩を入れざるを得ないのですが、その休憩のタイミングが他の乗務区とならないようにしてほしいというのは昔からずっと言われています。
同じ会社の同じ路線と言っても、他の乗務区の乗務員なんてほぼ知らない。
そんな誰だか知らない人ばかりの所で休憩するのは嫌だし、たいていは同じ乗務区の乗務員ばかりでかたまって小さくなっている感じがねえ、やっぱり嫌なんですよ。
本社から提示されたものをそのまま行路表とする会社・乗務区もありますし、乗務区内で監督職(区長から助役まで)と職場委員との折衝で決める職場もあります。
また同じ路線を複数の乗務区が担当している場合には、乗務区同士の調整も必要になってくるのですが、これが毎回取り合いと押し付け合いですごいことになるんです。
こんな1乗務でめちゃくちゃ長い時間乗務する列車なんて嫌だとか、逆にぶつ切りになって少し乗務しては短い休憩が続くような仕業は嫌だとか。
この乗務区同士の駆け引きは毎回大変なんですよ。
私がいた乗務区では、ほぼ行路表の概要が決まった段階で乗務区の会議室などに張り出されて発表となります。
そのほぼ出来上がった行路表を見ながら職場委員の班長や副班長を捕まえては、
「3番と9番の行路の優等列車を差し替えた方がバランスが良くならないか?(休憩時間などの関係から)」
「27番と35番の最後の乗務を差し替えれば、出勤時間順に退勤できることになるだろ?」
みたいなことを言ったり。
乗務員同士で「この仕業はカスやな」とか「この仕業は拘束時間が短いから得やな」なんて会話もよくされます。
こういった行路表の作成と合わせて、循環表の見直しも行われます。
循環表とは乗務員がどの仕業を担当するのかを定めた表です。
それとともに乗務区の助役を中心にスタフ作成が行われます。
運転士や車掌が使用する時刻表で、秒単位の時刻で停車時刻や通過時刻が記載されるほか入場番線や連絡案内などが細かく記載されるもので、ダイヤ乱れがなければダイヤグラムを持っていなくてもこのスタフがあればなんとかなる、そんな感じのものです。
スタフも会社によっては細かく記載していたり、私がいた乗務区のようにかなり端折って記載されているケースもあります。
ただスタフを行路表に合わせて作成していくわけですから、かなり時間はかかりますね。
でも昔は手書きとスタンプを押して作成していたけど、今ならばプリントアウトで作成できるのかな?
こうしてダイヤ改正実施の2週間前までには新しいダイヤグラムが配布されるので、家に持ち帰って自分で折って使いやすい状態に仕上げます。
多くの会社では折られた状態でダイヤグラムが配布されるそうですが、私がいた会社ではダイヤグラムは折られていない何枚かの紙の状態で配布されますので、張り合わせたり折ったり作業が必要でした。
そういえば毎回1000円ほど出せば綺麗に折って表紙も付けてくれる“職人さん”がいましたが、私は一度もお願いしたことがなかったなあ。
ただし綺麗に折り目を揃えられるダイヤができるまでには、乗務員になって7~8年は必要だったかな。
あとは行路表が製本されて手渡されると、ダイヤグラムを見ながら気を付ける点を書き込んでいました。
出入庫が絡む列車とか、支線・本線との連絡とか、ダイヤ改正までに分かることを行路表に書き込んでいました。
そうすれば乗務中にダイヤを広げなくても、行路表を見ればある程度のことが分かりますからね。
でも実際に乗務しだしてから行路表に書き込む量の方が多かったかな。
ダイヤ改正が発表されて実施されるまでの期間は、とにかく慌ただしくてちょっとしたお祭り騒ぎの状態が続いていました。