11月12日19時55分ごろ、京都~新大阪間を走行中の東京発岡山行き「ひかり521号で」、車掌が異常な揺れを感じたために停車して車両を点検。
20時25分ごろに運転を再開したが、上下17本の列車で最大37分遅れたとのこと。
普段から乗務している車掌が異常な揺れだと感じたそうですから、かなりの揺れであったことは間違いないのでしょうね。
山陽新幹線で2017年12月11日に発生した「のぞみ34号」の台車に異常があったまま走行を続け、東海道新幹線・名古屋駅で点検をした際に大きな亀裂を発見し運転を取りやめた重大インシデント発生以降、異音や異臭、そして異常な揺れに対する認識が大きく変わり、乗務員が積極的に異常の報告がしやすい環境になったのだと思います。
私は関西の私鉄勤務でしたが、昔はよほど大きな揺れでも感じなければ列車を止めて点検するという思考にはなりませんでした。
実際運転していて普段とは違う揺れを感じることはありました。
でも列車を止めて点検しようと思うどころか、列車無線で運転指令に報告したり交代の際に次の担当運転士に引き継ぐことも無かった。
揺れや異音を感じたとして運転指令に報告するとします。
すると必ず突っ込まれるのです、
「何かと衝突したと思われますが、何であったかは確認できていますか?」
運転士は前方の異常の有無を確認するのが義務の一つですから、大きな揺れや異音の原因となったものを確認しているはずですよね?と言われるわけです。
前方をきちんと監視していたとしても、揺れや異音の原因となるものは見ていないことがほとんどです。
それで
「確認はできていません」
と無線で報告すると、
「了解しました」
と運転指令に返答をされてそれ以上のやり取りはありません。
そして乗務区へ戻ってきた時に助役に、
「何があったのかは見ていないんやんな?」
「後続の列車や離合の列車を含めて何も報告がないから、特に異常はないということでいいな?」
たいていはこんな感じのやり取りで終わってしまいます。
こうなってくると、運転士は運転指令に報告することを躊躇ってしまいますよね。
変に揺れたとか変な音がしたとしても、運転士は何も報告せずに運転を継続します。
でも本当は自分自身が前方注視を怠ったために変な揺れや異音が発生したのかもしれないとは思うわけで、すると運転士は列車無線のボリュームを上げてビクビクしながらの運転を継続します。
そして後続列車などが何も無線で報告しなければホッと胸を撫で下ろして、列車無線のボリュームを元の音量に下げるのです。
運転士は運転指令や助役から前方注視について何か言われるのが嫌だから黙っておこうとなるし、運転指令はとにかく列車が遅れることを極端に嫌います。
こういった思惑から通常とは違う小さな異変を無かったことにしてしまう、そんな風潮が昔は蔓延っていたと思います。
だいたい揺れや異臭の原因がすべて何かとぶつかった際のものとしか考えられない、硬直した思考の下で働いていたんですよ。
そう思うと新幹線の車掌が異常な揺れを感じて報告し、実際に列車の点検まで行ったというのはものすごい進歩だなと思うのです。
今となって考えれば当たり前のことなのですが、昔はこれが当たり前ではなかった……
あとは実際に遅れに巻き込まれた乗客がどのような反応を示したのかも気になるところです。
急病人や人身事故、車両や信号回路の故障などに巻き込まれた際には、8割くらいの確率で文句を言われていましたから。