道幅が狭くて大型車の通行が禁止されている一方通行の道路。
その道路と線路が交差している踏切は当然一方通行で、その踏切で話です。
緩いカーブを抜けるとその踏切が見えてきたのですが、何やら動くものが。
非常ブレーキを入れたのですが当該踏切までに停車はできず、80mほど行き過ぎて停車しました。
その踏切には障害物検知装置は設置されていたのですが、この当時(1998年ごろ)は非常ボタンは設置されていません。
停車して側窓を落として後方を見ると、かなり年を取った方(じいさん)がオートバイ(スーパーカブ)にまたがっているのが確認でき、荷台には米袋がいくつか積まれていました。
お米屋さんの配達だったと思います。
障害物検知装置(障検)は踏切内に留まっている自動車を検知する装置ですが、障検の光線を遮られればオートバイだって障検が動作します。
ところが今回のケースでは、オートバイは遮断桿(遮断棒)に沿うように平行になって止まっていました。
踏切の中であっても光線を遮らない場所であったため、障検が動作しなかったのです。
※三次元レーザレーダー式ならば検知する場所ですが、一般的な光センサー式です。
また通常ならば遮断桿を押せば外に脱出できるのですが、この踏切は幅員が狭いため一方通行なので、遮断機が片側にしか設けられていません。
一方通行ではなく踏切内で自動車がすれ違い可能な幅員であれば、片側に2つの遮断機が儲けられるのが普通です。
2つ遮断機が設置の場合には遮断桿と遮断桿に隙間が生じるなど、人は簡単にすり抜けることができます。
また遮断桿が長ければ押せば簡単にしなるので、踏切外への脱出も比較的容易です。
ところが幅員の狭い踏切だったため遮断機は片側に一つだけであり、遮断桿の長さが短いために押してもしなりにくくで意外と脱出も難しい。
そして遮断桿の先は柵など上に位置することが多く、人ひとりでも意外と通りにくかったりします。
今回のケースは警報機が鳴り始めてから踏切に進入し、抜け切る前に遮断桿が降下して出られなくなった。
何とか出ようとオートバイにまたがりながら遮断桿を押してしならせるか、押し上げたかったが遮断機が片側一つのタイプだったから無理だった。
そこへ私が担当する優等列車が100キロ以上の速度で突っ込んできた、ということです。
停車した電車とオートバイとの隙間はわずかだし、遮断桿は短いために手で動かすことは難しい。
そこで私はオートバイに乗った人に
「今から電車をゆっくり動かすから動かないで!」
とマイクで車外放送し、車掌にはインターホンで
「今から電車を動かすので、踏切にいるじいさんを見張っておいてくれ!」と指示。
時速5キロほどでゆっくり動かし、当該踏切を列車の最後部が抜けたところで車掌からインターホンで
「カブに乗ったじいさん、無事に外へ走り出しました」
それを聞いてからは遅れを取り戻すためにノッチを入れ詰め(速度が落ちないように2~3ノッチを常に入れっぱなしにして運転すること)で爆速運転。
でも帰区してからは指導担当の助役に怒られましたけどね。
低速であってもそのじいさんと接触すれば大変なことになっていた。
降りて行って遮断桿を折ってでも踏切外へ出し、その後に運転再開しろと。
今ならばおそらく怒られるだけでは済まず、何らかの処分を受けていた可能性が高いのですが、平成10年ごろだったのでお咎めはありませんでした。