上り急勾配と落ち葉
山陽本線の瀬野ー八本松といえば超有名な難所。
今でも貨物列車は最後部に補機をつなげて押してやらないと、この区間の急勾配を上ることができない。
そんな難所で11月6日15時35分ごろ上り普通列車が空転して動けなくなり、一部区間で終日運転を見合わせた。
配信記事を読む限り急勾配に加えて、やや強い風によって落ち葉がレール上に落ちていたことも原因に上げられています。
落ち葉は踏みつけると油分が出るので、かなり空転しやすくなります。
私自身も落ち葉による空転は何度となく経験してきましたが、走行不能になるとはありませんでしたので、ツイていたのかもしれません。
今回のセノハチでの件は新しい車両(227系)だったそうで、最新の技術が仇になったような気もします。
空転制御
私が某関西私鉄で運転士をしていた当時の車両は、空転を起こすと強制的に回路を遮断するタイプが主流でした。
モーターがうなり上げて回転しだすと、モーターへの電気の流れをカットして回転を止めるわけです。
空転対策というよりはモーターの保護という意味合いの装置ですね。
その後に登場した車両からは空転制御が積まれるようになり、モーターの回転数が急激に上昇することで空転を検知します。
そして通常の走行ができるようになるまで電流を少しずつ減らして、モーターの回転数が低下するようにする、こんな感じです。
ただ所々にある25‰を超える上り勾配では、モーターの回転数が低下しすぎて走れなくなるという事態が起こり、通常3分もかからない駅間で10分以上を要するということが発生して、空転制御によるモーターの回転が低下しすぎないように改修したのですが、すると今度はごく普通に空転する状態になったりもしました。
私がいた会社でVVVFの量産車が出てきたころの話ですが。
227系で採用されているのかは登場時期からして微妙ですが、それまでのモーターの回転数による空転検知から、電流の変化を用いた新しい空転制御が開発されて、323系から使用されているとか。
電車の新たな空転制御方法を開発(PDF)
運転士の意思には関係なく
私がいた会社で最初に空転制御を搭載された車両は、結果的に空転制御の機能をかなり抑え込んで走りやすくなりました。
空転制御が働きだすと運転士のノッチ操作には関係なく装置の側ですべて制御されていたのですが、機能を抑え込んだことで運転士の意思によるノッチ操作ができるようになりました。
装置まかせだと空転し始めるととにかくモーターの回転数を抑えようとします。
ただ一度空転が始まると、少しくらい電流を抑制したところでモーターの回転数は落ち着かず、さらに電流を抑制しようとします。
すると上り勾配なのに上っていくほどのパワーが生まれず、どんどん速度が低下していき、最終的には止まってしまいます。
それで最初の空転制御装置を積んだ車両は電流の抑制の範囲をかなり限定的にすることで、運転士のノッチ操作という意思が反映されるようになりました。
今までならば電流が抑制されるところを、運転士の判断で3ノッチで空転を抑えつつ上り勾配も越えられるだろう、のような感じに。
私が運転士を退くころに導入された車両は、空転制御が働くとノッチオフを除いて一切運転士のノッチ操作は無視されるように。
運転士の感覚で、この土砂降りの上り勾配は2ノッチと3ノッチを組み合わせれば、さほど空転は気にせずに上っていけると感じていても、あくまで装置側のプログラム通りに制御されていました。
結果的に装置側のプログラムでも上って行けたとしても、通常より大幅に速度が低下して遅延が発生する原因になっていました。
今回のセノハチの件では、おそらくですが装置のプログラムによって極限まで電流の抑制が行われたのではないかな。
0.5Mの方式がどのように影響したのかは分かりませんが、新しい技術は机上では最高のものになっているはずが、実際に走らせてみるとまったく違う結果が出る…、本当にこのケースが多いんですよ。