異線現示
本来進行するはずの進路ではなく、まったく別の進路へ進むようにと信号が現示される場合があり、これを異線現示と呼んでいます。
信号の制御はポイントや行先表示機などとともに列車運行管理システムで制御されているのですが、いろいろな原因によって間違って現示されることがあります。
ちなみに異線現示に気付かずに進行すれば運転士の責任(運転事故)となります。
システムの異常であってもそうですし、信号士の手動での信号現示が間違っていた場合でも。
信号士へ責任は運転士に比べると緩くて、運転士が異線現示に気付いて止まっていれば信号士だって助かったのだから、運転士がとにかく悪いみたいな感じだったのが何とも(私がいた会社だけだと思いますけど(^^;))
運転指令の決め台詞
私の1本前の列車が運転指令へ無線を入れました。
その時ははっきりとは聞き取れずあとで聞いた話なのですが、本来入線するはずの1番線ではなく2番線へと進路が開通していた。
異線現示だから無線を入れたということですね。
すると運転指令は
「それでは信号現示に従って進行してください」
と指示してきました。
この状況では一旦信号機を落として正規の進路へ変えるのが正常な取り扱いなのですが、鎖錠という仕組みによって一定時間が経過しなければポイントを切り替えて信号を現示することができません。
またこの時は、1番線と2番線は番線は違えど同じホーム(左右の違いだけ)だったので、運転指令は遅れを嫌ってそのまま入場させました。
このケースの場合、特に支障がなければそのまま入場させることが日常的に行われていました。
だからと言って運転士が運転指令に無線を入れずに、そのまま2番線へ入れば異線進入として罰せられるのですが……
後続の私の列車に運転指令が指示を出してきます。
「先行列車は入場番線変更のため、〇〇列車運転士も入場番線を変更。信号現示に従って進行してください」
この指示が後々問題になってくるのです。
信号現示には従えません
入場番線変更の駅に近付き場内信号機を確認したところ、たしかにスタフに指示されている入場番線ではありません。
指令の指示通りに入場しても良かったのですが、これは絶対にダメだと思って非常制動で列車を止めました。
1番線への入場指示ならば従っていたのですが、現示されていたのは3番線。
ちなみに1番線と2番線は上りで、3番線と4番線は下りホームという配置。
上り列車が下りホームへと入るのはさすがにまずい。
「〇〇列車運転士ですが、本当に信号現示に従って進行しても良いのですか?」
すると返ってきた無線は
「はい、そのまま入場……少しお待ちください!そのまま停止しておいてください!」
運転指令のパネルを見れば進路の開通状況は一目瞭然なのですが、きちんと確認していなかったのでしょうかね。
私が無線を入れてから大慌てで信号を落とし、ポイントを切り替えるために駅手前でしばらく停車。
こういう時の1~2分って本当に長く感じます。
「では、信号現示に従って入場してください」
5分ほど遅れて1番線へ入場となりました。
ちなみにこの時なぜシステムが妙な進路構成を行ったのかは知らされませんでしたが、ひょっとすると運転指令の方で連絡なく手動扱いを行っていたのかも……
運転指令ってとにかく遅延を嫌う職場で、なんでもかんでも「信号現示に従って進行してください」って言いがちなのです。
ただこの一件以降ほんのしばらくの間だけ「信号現示に従って進行してください」とは言わなかったですけど。