小さなお子さんが電車の運転士になりきって遊んでいる時たいていは
「出発進行」
と言いながら指を前の方に差す行為をすると思います。
それほど鉄道の運転士が行う指差喚呼って浸透しているのだなと思います。
指差呼称とか指差確認と言われることもあります。
私が運転士の見習中に教習所で聞いた話ですが、喚呼の発祥は日本の国鉄(鉄道省時代)だそうです。
蒸気機関車には機関士と機関助士が乗務していて、やや視力が衰えだした機関士が前方の信号を確認するたびに声に出すとともに指で差すようになり、隣に乗っていた機関助士も同じように指で差しながら喚呼(復唱)するようになったのが始まりだと。
これによって目で見て確認するだけとか呼称(声に出す)するだけよりも正確性が格段に増し、全国的に普及していったとか。
100年以上昔の話だと記憶しています。
※うろ覚えなので正確ではないかもしれません。。。
「喚呼」についてはどこの鉄道会社の運転士も昔からやっています。
中には○○という私鉄の運転士はほとんど喚呼はしていない、なんてブログ記事なども散見しますが、やってますよ。
ただし客室にまで聞こえるほどの大きな声ではやっていないだけ。
別にお客さんに聞かせるためのものではないですからね。
運転士自身の耳に入る音量であれば問題ありませんから。
では「指差」についてですが、私が運転士になったばかりの1988年(S63)頃は、運転中は禁止されていました。
私が勤務していた会社だけではなく、関西の私鉄の大半は同じような扱いでした。
運転中ではない場合、例えば列車標識や運行標識の確認時には「指差」をしていました。
乗務員室に入って各機器の点検時には「指差」をしていました。
でも列車が動いている時、つまりは運転中については「指差」禁止。
その理由は
「運転士は何があっても運転中はブレーキから手を離してはいけない」
から。
ただし前照灯の「上」「下」の切り替え時やワイパーのスイッチを操作するときは、特例的にブレーキハンドルから手を離すことを許されていました。
「目がかゆくても、頭がかゆくても、列車を停車させるまでは我慢しろ」
「くしゃみや咳の時もブレーキからは手を離すな」
なんて言われ方をしていた時代です。
「スタフを見て指でたどって確認している間に、不審者が軌道内に入ってきたらどうやってブレーキをかけるんだ!だから国鉄のやってることは疑問に思う」
なんて教習所で聞かされていたほどですから。
今でも関西の私鉄の運転士の中にはすべての信号機に対して指差喚呼を行っていないケースがあります。
昔からの流れもあるけど、どうしても間違ってはいけない重要な場所に絞って指差喚呼をしているように見受けられます。
例えば場内信号機、それに進路予告機や進路指示機など。
進路を指示する信号機に対して、自身の列車が進行すべき進路に間違いがないのかといった重要な箇所だけ、指差喚呼をしているとか。
駅の停通の確認時は指差喚呼するとか。
場所を絞って実施しているような気がします。
私も禁止されていたけど、駅接近時の停通確認だけは指差喚呼していました。
怒られるかもしれないけど
全ての信号機などに対して指差喚呼するよりも、要所要所でするほうが良いような気がするけど。
私の性格上の問題かもしれませんが、すべての信号機に指差喚呼なんてしだすと「指差喚呼のための指差喚呼」つまりはただのポーズになってしまいそうなんですよね。
完全実施で事故が防げるのならば、過走(オーバーラン)なんて事故を運転士がするはずもないわけだし。
ダラーっとすべての信号機などに指差喚呼するよりも、本当に重要な箇所でだけ指差喚呼をするほうが事故は防げそうな気もするんだけど。