2000年頃に出してきた利用者数の予測データ
もっと柔らかいタイトルにしたかったけど、思いつかなかった……
Xでも少し触れましたが、まだ現役バリバリの運転士をしていた2000年頃に、関西大手私鉄の今後の利用者数の予測データを見せてもらったことがあります。
実物が手元にありますがかなりやばい内容が多すぎて……
関西の各私鉄は1991年(平成3年)ごろをピークに利用者数の右肩下がりの状態が続いていますが、見せてもらったデータによると利用者数が回復する兆しはまったくなく、下がり続けるとの予測が出されていました。
※関東の各社局は1998年頃がピークでその後は右肩下がり
もちろん予測であって、実際にはデータに反して前年度より増加した年度もあります。
予測データが出されたころはインバウンド需要なんて考慮されていませんでしたし(というより、インバウンドなんて言葉も聞いたことがなかったし)、コロナ禍によるかなりの利用者数の落ち込みだってデータには含まれていません。
なので予測に反して実際のデータでは上振れすることもあるし、とんでもなく下降することもある。
とんでもなく下降したコロナ禍から脱却して上昇しているように見えるけど、元の右肩下がりのラインにまで戻ってきているのに加えて、外国人旅行者の需要もあり増加しているように見えるだけではないのかな、という印象もあります。
ダイヤ改悪もこのデータに基づくもの?
Xに、ダイヤ改正が発表されるとよく目にする改悪の文字…と言うことも呟きましたが、鉄道社局は実際の乗降車データ(今はICカード利用者のデータが簡単に取り出せるけど、昔は流動調査と言って乗車時に紙片を渡して降車時に回収というアナログな方法)のほか定点観測と言って、例えば朝ラッシュ時間帯にある駅のホームに立ち、各列車の混雑具合を目で見て調査もします。
1だとほぼ空車とか、10だと吊り革にも捕まれない人がいるほど混雑しているみたいに、1から10までの段階査定を各列車の車両ごとにチェックしていきます。
先頭車は10だけど、4両目は8で最後部車両は7みたいな感じですね。
これを通年は季節ごとに行い、そろそろ新しいダイヤの作成に取り掛かるとなると、曜日ごとのデータや夕ラッシュ時間帯のデータも必要になるから、定点観測の回数がめちゃくちゃ増えるという感じです。
ちなみにこれらの作業は、私がいた会社ではダイヤ作成担当者が私服でホームに立ってチェックしていました。
そのほか臨時列車の利用状況もチェックするのですが、これはなぜだか乗務区の助役が行っていました。
滅多に定点観測データを取らない助役は
「こんなの分からないから、適当に書いて出しておくよ」
なんて言いながら記入していましたが。
これに加えて各社局の思惑が加味されてダイヤが作られていきます。
これから先も利用者は減っていくという前提があるので、どうしても運転本数減や編成両数の見直しに繋がっていきますよ。
だからダイヤ改悪だと利用者側からは捉えられるわけだし、実際にお客さんと接する駅員や乗務員もひどいダイヤになったなと感じるわけです。
新しい予測データ
私が見た(というか持っている)データはもう20年以上昔の予測値ですから、実態には合わなくなっているでしょうね。
関西の一私鉄でも研究機関に依頼してデータを作ってもらっているのですから、関東の私鉄をはじめJR各社は当然データを持っているはずだし、関西の私鉄も新しい予測データを持っていると思います。
もう鉄道会社を退職していますからその新しいデータを目にすることはありませんし、20年前のデータと違って詳細な情報も書かれていると思います。
もちろん昔より予測値も正確だと思うし。
そこにはコロナ禍後の利用者の動向予測のほか、外国人旅行者による需要予測も含まれていると思います。
外国人旅行者による収入は臨時収入と考えている社局もあるような気が
そうじゃないとここまで外国人旅行者の数を無視したダイヤ編成はあり得ないし
ここ数年のダイヤ改正はおそらく新しいデータに基づくものでしょうし、そこに各社局の思惑が大きく覆いかぶさってダイヤ編成されているでしょう。
今でもこれだけ混雑しているのに、発表された改正内容ではさらに混雑に拍車がかかる、という率直な感想を持つ方もおられるでしょう。
それも結局は予測データと各社局の思惑(簡単に言えば少なくなる収入からいかに利益を上げるか)から、今後5年とか10年というスパンでダイヤや車両の運用、さらに人員配置を考えてのことだと思います。
JR東や西が減量ダイヤや無人駅化、ワンマン運転、みどりの窓口の閉鎖を積極的に進めているのも、5年後10年後の利益確保に奔走しているからということかな。
ただし読み違えてと言うか、思惑部分をあまりにも大きくしすぎたダイヤを編成したことで、クソみたいなダイヤが出来上がったという事例もあります。
こういうことをこれまでにさんざん目の当たりにしてきたからXに
「改悪だと叫んでも実際は乗らざるをえない
迷惑する利用者と現場労働者
そしてほくそ笑むのが各社局の事務方・総合職」
と呟いたわけです。