手渡ししていた遅延証明書
私が駅勤務をしていた81年ごろはガラケーもなかった時代ですから、遅延証明書は駅員が直接手渡しするのが普通で、社局によっては箱にガサっと入れておいて、勝手に持って行ってくれという感じの駅もありました。
ちなみに遅延証明書のことを「延着証明」「延着証明書」と呼ぶことが多く、こちらの名称が普通なんだと思っていたのですが、一般的には「遅延証明書」と呼ぶのかな?
私がいた会社では延着証明と社員もお客さんも呼んでいた気がするのですが、HPを見てみると今は京阪くらいしか使っていないようですね。
「全体的に遅れているようだから、駅長室に入ってこないように駅長室の前で延着証明を配ってこい」
これは本当によく言われました。
おとなしく遅延証明書を受け取るだけの人ばかりなら良いのですが、必ずストレス発散のためか文句を言いたい人っていますからね。
そういう人に手を取られると、接続のために発車を抑えるように運転指令と連絡を取ることも難しくなるし、本当に仕事の邪魔なので駅長室へ入ってこないようにブロック!する役割もありましたから。
遅延証明書を発行するときには、駅長室が運転指令にどの程度の遅延が発生しているのかを電話で聞き、その情報を管区内の各駅へ伝達していました。
ただ運転指令からの情報どおりの遅延証明書を渡そうとすると、
「もっと遅れていた!」
というお叱りの声が多かったこともあり、
「何分くらい遅れていましたか?」
とお客さんに聞いて、言われた時間の遅延証明書を手渡していました。
さすがに5分くらいの遅れになのに、1時間遅れていたと言われてそのまま手渡すことはなかったのですが、それでも10分とか15分くらいの証明書は渡していました。
何分の証明書を何枚発行したのかを報告書に書かなきゃいけなくて、結構それが大変でした。
大きな駅とか乗換駅となると遅延証明書の発行枚数がかなり多くなるし、長蛇の列になってくると何枚補充して何枚渡したのなんて正直分からなくなるんです。
大きな駅の場合は報告書の記載は助役の仕事なのですが
「何枚渡したのかくらいは数えておけ!」
ってヒラの駅員はよく怒鳴られたりしていましたし。
乗り遅れたから遅延証明書を出せ!という人も
運転士になってからのことですが、
「いまの電車が早く出ていったのですけど!」
普通電車の出発を待っていた私のもとへ、血相を変えて女性が走ってきました。
出発信号機があって時間も制御されているために早発はあり得ないのですが、その女性は手に持ったケータイを私に示しながら、
「今は〇分でしょ?私はケータイで時間を確認しているから間違はない!」
私の腕時計と運転時計をその女性のケータイの時間とを比べると、ケータイの時間が約2分も遅れている。
昔のケータイって時々電源を入れ直してやらないと、時計を正確に合わせてくれないなんて機種もありましたから。
それを指摘しても納得しないし、
「乗り遅れたのだから遅延証明書を出してください」
なんて言いだす始末。
この女性の例は極端なものですが、車掌や運転士をしていて何度か
「乗り遅れて会社の最寄り駅に着くのが遅れるから、遅延証明書を出してくれ」
と言われたことがあります。
遅延証明書ってそういうものではないのですけどね…
遅延証明書はHPからダウンロード
JRや大手私鉄を中心に遅延証明書はHPからダウンローするタイプへと変わりました。
ペーパーレス化もあると思いますが、駅の人員削減の影響の方が大きいのでしょう。
私がいた会社では遅延証明書は当日しか発行しておらず、後日の発行はおそらく対応していませんでした。
「何日前の遅延証明書を発行してほしい」
といったリクエストを受けたこともありませんし。
ただHPからのダウンロードの場合は、1週間ほど以前の遅延証明書も発行できるようで、その点は便利だと言えるのかな。
当日すぐに遅延を証明するために遅延証明書が欲しいけど、スマホを家に忘れてきた……
なんて言う時はどうするのかな。
後日提出でもOKならばダウンロードすれば良いだけなので問題ないけど、どうしても当日ほしいから、紙の遅延証明書を……なんて言われても、もう駅に配置していないことも考えられるし。
その前に都市部の駅でも無人化が進んでいるから、もらうこと自体が不可能なこともあるだろうし。
鉄道を使うにもスマホ必須という時代になっているのかな。。。