走行中の列車の列車分離
東北新幹線の古川~仙台間を走行中の「はやぶさ6号・こまち6号」が315キロで走行中に連結が外れて列車分離し緊急停止。
鉄道車両は制動管または電気回路が先頭車から最後部の車両まで貫通していて、制動管内の空気圧が490KPa以下になるまたは電気回路が断線するとブレーキがかかって停車します。
列車を2つ以上連結した場合でもこれは同じで、今回のように「はやぶさ」と「こまち」が分離した瞬間にブレーキがかかって停車します。
これは鉄道関係者ならば誰でも知っていることだと思いますが、報道によると列車分離した車両同士がぶつからないように制動力を変えていたというのは初耳でした。
分離した前を走行する列車より、後を走行する列車の制動力が弱ければ確かにぶつかるのかなとは思いますが、そこまで考えているというのにはさすがにびっくりしました。
在来線の車両ではそこまで考えて設計はされていないと思います。
(私が在籍していた会社の車両にはそういう設計はさすがに盛り込まれていない)
列車分離の原因はまだ分かりませんが、やはり徹底して究明して策を講じないと怖さはぬぐい切れません。
私自身もさすがに走行中の列車分離は経験もないし、見聞きしたこともありませんが、連結作業が終わりいざ出発させようとしてノッチを入れると分離した、という話は他社を含めて耳にしたことがあります。
連結してから後進ノッチを入れて、引っ張っても離れないのかをチェックして問題ないのに、お客さんが乗車していざ出発という段になると離れてしまう。
何かの見落としが原因なのかも含めて詳細を聞いたことがないので何とも言えませんが、列車が分離してしまうという事象は少なからず起きています。
ただ新幹線で起きたというのはかなりショッキングな事件ですね。
輪軸組立時の不正
きっかけは2024年7月24日の山陽本線・新山口駅構内で起きた貨物列車の脱線事故で、けん引していたEF210の進行方向に向かって一番目の車軸が折れていたことでした。
その後JR貨物は点検を進めていく中で、9月6日に広島車両所内において輪軸組立作業の確認を行っていた際、社員からの申告により、車輪及び大歯車の圧入作業において、圧入力が基準値を超過していた場合、検査結果データを基準値内のデータに差し替えて、検査を終了させていたことが判明した。
輪軸とは車輪と車軸を組み合わせたものです。
車軸の太さより狭い車輪の内径に70トンほどの高圧力をかけてくっつけて輪軸に仕立てる(圧入)のですが、規定値以上の圧力をかけて組み立てたことで損傷を受けてしまうということでしょうか、車軸が折れるという事故に発展したようです。
国交省は全国の鉄道事業者に点検を指示したところ、あちこちの会社で同様の事象を確認したわけですね。
走行中の列車の車軸が折れて脱線する…
なんともショッキングな事象ではありますが私が運転士になってすぐのころ(昭和の末)、超ベテランで定年間近の元運転士の方々数人に聞いた話ですが、私が所属していた会社では車軸が折れる事故というものは戦前から戦後すぐにかけて数件あったようで、
「車軸が折れると急に電車が重くなったような、後ろから引っ張られるような感覚になる」
という話を聞いたこともあります。
危険なことではありますが、大昔から輪軸組立の際に規定以上の圧力をかけることはあったのかもしれません。
ただ昔のことですから、車軸に使われている素材自体があまり良くないものだった可能性もありますが。
車軸が折れるという事故は少なからず昔から発生していた、のかもしれません。
表に出ないだけでいろいろと…
ひょっとしたら当ブログですでに書いている内容かもしれませんが…
平成になってすぐのことですが、もうすぐ検査(全般検査か重要部検査)に入る車両を担当していたベテランの運転士。
※私の直接の師匠ではないけど、尊敬していた運転士の一人
この車両は空気制動の効きがあまりにも悪く、他の運転士の間でもちょっとおかしいのではないかと噂されていた車両でした。
実際私もハンドルを握りましたが、以前はブレーキがよく効く運転しやすい車両だったのに久しぶりに担当すると、電制が切れて空制になったとたんにノーブレーキになっているのではないかなんて思うほど、とにかくひどい状態になっていました。
で、そのベテランさんが担当時に、電制は通常通り働き減速していくけど空制に変わる10km/hくらいから急にブレーキが利かなくなるとの無線連絡を入れる。
普段はおとなしくてニコニコしているその運転士が、乗務区に戻るなり鬼の形相で指導助役に、
「40年ほど運転してきたが、こんなひどい電車を運転したのは初めてだ!」
と詰め寄り一触即発の状態に。
あの運転士があそこまで怒るのは尋常ではないし絶対に車両に何かがあると、多くの運転士がその車両をすぐに車庫へ入れて点検しろと大騒動になり、乗務区長の指示で車両の振替を実施。
車庫に入った当該車両を乗務区の助役のほか労組の職場委員(役員)も同行して、車両課の課長クラスとともにブレーキ関係をチェックしていたところ、なんととんでもないものを発見した。
T車のブレーキシューは通常の厚みがあったが、M車のブレーキシューは相当薄い。
その様子を見た職場委員は、
「ブレーキシューがカマボコ板くらいの厚みしかなかった」
話によると3日後に工場に入るし、T車のブレーキシューは十分あるから問題なく運用できるだろうと車両課の判断でそのまま使用されていた。
※わざわざ薄いブレーキシューに替えたのではないと言っていたらしいですが…
工場内のことなんて表に出ることはまずないだろうし、日頃から同様のことをしていたのかもしれませんが、これくらい大丈夫だろうと高を括っていたり、点検を省略している可能性は否定できません。
新幹線のもそうだし、各社で発覚した輪軸もそうだし。
たまたま大事故に発展せず、フェールセーフの思想による設計で助かっただけかもしれないですしね。