一段制動階段緩め
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一段制動階段緩め

以前にも書いた一段制動階段緩めについての記事ですが、以前の記事に加筆修正したものをアップします。

 

私が勤務していた会社では、ブレーキ操作の基本は一段制動階段緩めでした。

一段制動というのは必要なブレーキ力を得られる角度まで一気にハンドルを操作すること。

例えばブレーキ弁の操作を40度→60度→80度といったように何度かに分けずに、一気に80度の角度まで入れることを指します。

 

現在主流の電気指令式のブレーキの場合は一気に6ステップ(ノッチ)なんて入れるとかなり衝動が伝わるので、軽くブレーキを当てて(1とか2ステップくらいかな)電気制動が立ち上がってから6ステップに入れるなどして、急激なブレーキ力が伝わらないようなハンドル操作をするほうが多いかな。

※ジャーク制御や遅れ込め制御などでかなり緩和はされているけど

 

そして2~3回に分けてブレーキを緩めながら停車させることを階段緩めと言っています。

なぜ階段なのか?ふつうならば”階”と”段”が入れ替わって段階緩めのはずですよね?

 

昔の鋳鉄製のブレーキシューは高速域では制動力がかなり劣っている半面、速度が低下するにつれて制動力が大きくなる特性があります。

ブレーキを緩めずにそのままのハンドル角度を維持していると、どんどんブレーキがきつくなってしまうのです。

だからと言ってブレーキ力を一定にするために、ブレーキを細かく緩めていくのも現実には難があります。

ずーっとシュシュシュと言う音をさせて緩めるのもねぇ。

※実際にはいましたけどね、数十回に分けてブレーキを緩めていく運転士が私が所属していた乗務区には

 

ただ実際には2~3回程度緩めることで、ブレーキ力が急激に強くならないように操作します。

 

 

赤い線が制動開始から停車まで一定の減速度で速度を落としていった場合で、図にすると直線になります。

青い曲線は昔の鋳鉄シュー装備の車両で、制動開始から停車時までハンドル操作をせずに止めた場合で、制動開始時はあまり減速度は高くないのですが、どんどん減速度が増していく様子を表しています。

緑の横線はブレーキを少し緩めて減速度を緩和した状態で、この図では2回ブレーキを緩め赤い線に近づけて停車させています。

図にすると階段状になっているのが分かると思いますが、ここから階段緩めと言う言葉ができたと大昔の運転士見習の学科教習で説明を受けました。

※汚い図ですいません。。。

 

階段緩めと言うのは本当は、鋳鉄シューを使用している場合そのままでは制動力が大きくなりすぎるので、階段状に緩めることでそれを防止するための制動方法です。

現在一般的に使用されているレジンシューや合成シューは、基本的に速度に関係なく制動力は一定です。

※厳密に言えば10~15Km/h程度の低速になると制動力は大きくなります。

なので本来の意味である階段緩めは不要とも言えるのです。

それに今は電気制動がほぼ停止寸前まで動作するので、階段緩めなんて意味がありません。

停止位置を調整するために一度緩めれば十分なはずです。

 

一段制動についても少しばかり。

これは昔の自動ブレーキ時代の名残りで、ブレーキを緩めた後にブレーキ力が足りないからと追加しようにも、自動ブレーキでは困難な場合がありました。

そのために最初に必要なブレーキ力を一度目のブレーキ操作で得て、あとは階段緩めによって調整していく一段制動階段緩めを標準的な制動方法としたのです。

 

一気にブレーキ力を得る一段制動は乗り心地の面では劣るとも言われ、最初にも書いたように軽くブレーキを当てて電制を立ち上がらせてから、本来必要なブレーキ力まで加圧する二段とか三段制動を用いる人が多くなっています。

私は朝ラッシュの時間帯は二段制動を用いることもありましたが、基本的には一段制動で止めていました。

また階段緩めは電磁直通ブレーキや電気指令式ブレーキの車両で、電気制動が失効して空気ブレーキのみになるさいのショック防止のために緩めるのと、10~15Km/h以下で制動力が増すことによる乗り心地の著しい低下を避けるために緩めていました。

少しだけ純電気ブレーキの車両も運転しましたが、この車両の時は一段制動一段緩めがほとんどだったかな。

階段緩めなんて一切必要がなかったから、一気にブレーキをすべて緩めて止めていました。

 

 

一段制動は正確な制動距離が取れているのかを運転士自身が確かめるのには最適です。

2~3度の階段緩めでピタッと止められると言うのは、速度(惰力)を正確に掴めている証拠でもあります。

今は応答性が良くなったためか、ブレーキを緩めたり加圧(追加制動)したりを繰り返す運転士が多くなりました。

※ブレーキを緩めたり追加したりを繰り返すことを「舟をこぐ」なんて言っていました。

そのような運転をしても乗り心地が悪くなりにくいですしね。

そして停止寸前にブレーキを加圧して、ドーン!って止めてしまう運転士も少なからず存在していますよね。

 

現在の電車の性能からいえば一段制動階段緩めは古びたブレーキ操作かもしれません。

でも車両の性能と乗車具合と勾配と曲線と天候などを考慮したうえで、一度で正確な制動距離を導き出し一段制動で止めにかかる。

そしてブレーキを追加することなく、多くても緩めるのは3回までで停止目標にピタッと停車させる。

これは運転士の基本中の基本の制動の方法だし、運転士見習が終わり一人前の運転士になってからも勉強し続ける必要があるものだと思います。

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