今回の話は私が勤務していた会社ではなく、他社で運転士や助役などをしていた友人や兄から伝え聞いた話です。
この会社は関西ではお上品な会社と思われているようですが、いろいろと話を聞いていると噂と実態とはかけ離れていて…
早朝から駅長室(駅事務室)へやってくる
某路線の本線の上りホームにある駅長室(駅事務室)
本線のほか支線が分岐している駅で、昔は学生でごった返していました。
この駅の周囲も私にはお上品なイメージがあり、今回の話を聞いたときは本当かなと思いましたが、複数の友人や兄からほぼ同じ内容の話を聞きましたし、駅長室へやってくるその人の名前?ニックネーム?も同じなので、真実なのかなと…
下りの始発列車はこの駅を4時30分過ぎに発車していくので、駅長室は当然この発車時間の前から営業しています。
ほぼ毎日その人(以下 Tと表記します)は下りの始発が出ていく前に駅にやってきて、上りの始発に乗車します。
機嫌が普通ならば駅長室の前を素通りしていき、ホームのベンチに座って上り始発の到着を待ちます。
しかし機嫌がやたらと良い時と、機嫌がやたらと悪い時は駅長室に入ってきて、助役を相手に話をしていきます。
ちなみにこの駅の上りの始発は5時20分ごろですから、約1時間は毎日駅に滞在しているようです。
なぜそれほど風通しが悪いんだ!
このTという人は、機嫌がよいときは駅長室にどこかへ行ったお土産だと言ってお菓子を差し入れたりもするし、助役と普通に談笑を楽しんだりしています。
※助役にも仕事があるので楽しんでいるのはTだけです…
ところがダイヤ改正や運賃改定が報道されると急激に機嫌が悪くなり、実際にダイヤ改正や運賃改定が行われしばらく経過するまでは、毎朝駅長室に怒鳴りこんでくるのです。
私がいた会社でもそうでしたが、ダイヤ改正や運賃改定の話を最初には耳にするのはテレビや新聞から。
本社の広報あたりがマスコミへプレス発表するのですが、駅勤務や乗務員も含めて知るのは報道からで、会社から詳細が伝えられるのはもう少し後になってから。
ダイヤ改正があるらしいとか、運賃改定があるらしいといった〝うわさ〟は耳にしているのですが、それ以上の情報は持っていません。
そしてテレビか新聞でダイヤ改正や運賃改定を知ったTが、翌早朝に駅長室の助役に詰め寄るのです。
助役もマスコミ報道見て知っただけですから、早朝からTに詰め寄られたって何も答えられません。
すると激怒しだして、
「客の質問に答えられないってどういうことだ!」
「新聞やテレビで知って社員に聞きに来ているんだぞ、きちんと答えろ!」
「お前の会社は本社と現場でそれほど風通しが悪いのか!」
といった具合に、上りの始発列車が到着するまでまくしたてるのです。
私がいた会社でも同じような人はいましたし、同じようなセリフを吐かれたこともありますが、このTという人のように数週間にわたってねちねちと口撃してくる人はいなかったような…
運賃改定になるとさらに
このTという人ですが、運賃改定が報道された後はかなりひどく詰め寄っていたようで、
「庶民はみんな日々の暮らしを切り詰めてやりくりしているのに、お前らはなぜそんな簡単に値上げするんだ!」
「お前らがどの程度切り詰めて限界まで頑張ってきたのかを見せてみろ!」
これに加えてまだ現場には降ろされていない運賃の詳細情報を聞いてきて、
「お前たちが勝手に値上げするのに、なぜ働いている者は詳細を知らないんだ!」
気持ちは分からなくもないけど、私がいた会社やこの会社などでは、現場へ詳細情報を降ろすのがとにかく遅くて、毎回ダイヤ改正や運賃改定の発表直後は現場ではバトルが繰り広げられていました。
運賃改定が発表されて数日後、まだ現場に詳細情報が降ろされていなかった早朝のこと。
いつもにも増して機嫌が悪かったTは駅長室へ入ってくるなり怒鳴りだして、カバンから包丁を取り出して振り回しだした。
警察沙汰にするのを嫌がり、とにかく品のある会社という世間での立ち位置を崩したくなかったのか、警察へも連絡せずにTをそのまま逃がしたと聞きましたが、私がいた会社ならば即警察へ電話しているのにと驚きましたからね。
包丁を振り回した以降も、駅長室内で暴れてイスを投げるといった器物損壊行為も頻繁にあったとか。
そこそこの高齢の方らしく、とにかく自分の思い通りにならないと気が済まない方だったようで、毎日相手をする駅長室でも手を焼いていたと言います。
※それならすぐ警察を呼べばいいのに、世間体を気にする会社はこれだから…
それから数年後に阪神大震災が発生しTの自宅はかなりの被害を受け、それ以降は駅長室へ立ち寄ることがなくなったと言います。
何かに気付いて文句を言わなくなったのか、ただ文句を言う気力を失くしただけなのかは誰にもわかりません…
今ならばこの会社もすぐ警察を呼ぶようになったと聞きますから、働いている者にすれば少しは理不尽な人を相手しなくて良くなり、精神的にはマシになったのかもしれません。