手旗(フライキ)
まずは下の動画をご覧ください。(Xに投稿された動画です、削除等でご覧になれない場合もあります)
前5両 我孫子止まりの切り離し作業
E231系 マト116+マト126 pic.twitter.com/s08qRZKLhd— すいしん (@Sui_shin) September 5, 2024
上の動画は「前5両 我孫子止まりの切り離し作業」と題されたもので、最初見たときはJRって手旗の振り方が独特なんだなと思う程度だったのですが、2~3度見るとさすがに違和感を感じました。
手旗の赤と緑が逆なんですよね。
赤い旗を振ってどうするの…
手旗による合図にはそれぞれ意味があり、JRなどではすべて広げて振る場合と、旗を絞って振る場合とで意味合いが異なるなど各社ごとに規定されています。
ただ大原則があって、赤い旗が掲げられた場合には列車を止めなければいけません。
旗を振っている駅員もですが、構内運転士?も赤い旗が振られていたら列車を動かすだなんて許されるものではない。
本当にメチャクチャな取り扱いなんですよね。
赤いものを見たら列車を止めろ
私が車掌見習だった1983年初夏、運転士見習だった1987年晩秋から1988年春、教習所での学科教習の際には口酸っぱく言われたし、現場で見習に就いていた時にもよく言われたのが、
「鉄道係員は赤いものを見たら敏感に反応し、躊躇なく列車を止めろ」
それこそ常置信号機(閉塞や場内、出発、入換など常に設置されている信号機)はそこには無いと分かっている場所であっても、赤いものが見えたらすぐに反応できるくらいでないと鉄道係員としては失格だと言われ続けていました。
本当にあった話ですが、まだ私が車掌だったころに、あるベテラン運転士が駅間のなんでもない場所で非常制動で列車を止めた。
踏切もなく、閉塞信号機を越えてすぐの場所だった。
その運転士は沿線の住宅の物干しに赤い大きなもの(真っ赤な大きな敷物だったらしい)が目に入った途端に、間髪入れずに列車を止めてしまった。
非常ブレーキを入れて列車が止まるまでにその物干しの場所を通過し、しまったと思って慌てて全緩め位置にブレーキ弁ハンドルを持って行ったが、ブレーキは緩解するはずもなくドスンと停車。
無線を入れることもなく乗務区に帰ってきて、助役にすべてを話した。
今ならばすぐに列車無線で緊急停止したことを報告しておかないと、それだけで処分対象になることもあるのですがこの時は、
〝赤いものが目に飛び込んできて非常制動を入れるのは、運転士として当然〟
っていうことで運転士はお咎めなんてなし。
今だとどうなるのかな。
でもこの駅員や運転士を責める気にはなれない
最初の動画の話に戻りますが、旗を振って合図を送った駅員とその合図を見て車両を動かした構内運転士(?)
二人ともとんでもないミスを犯しているのは事実です。
でも最近の各鉄道事業者を見ていると、この二人だけが悪いとも言えないように感じています。
私が乗務員をしていたころに思ったのは、2000年ごろを境にして会社側が駅員や乗務員に対してきちんと教育ができなくなってきたと、かなり強く感じていました。
あまりきつい指導を行うとパワハラなんてすぐに言われる時代に突入していったころですが、怒りながらしか教えることができない昭和気質(私もですね…)が敬遠されて、やさしく諭すように教えなければいけない風潮が強くなっていきました。
車掌でも運転士でも、見習に指導員が少し強めの言葉で注意すると、トイレにこもって出てこない見習が出現したり(トイレにこもって壁を叩きながら号泣するという…)、キレてそのまま家に帰ってしまったり、翌日以降出社しない見習がいたりと問題にもなりました。
指導員が優しく手取り足取りしながら教えるようになると、見習中に問題行動を起こす人はいなくはなりました。
でも見習が終わって一人で乗務するようになると、何でもかんでも列車無線で問い合わせる乗務員が多くなったり、とんでもないミスを犯す人も増えていきましたし、そのくらい車掌・運転士をしていれば知っておかなくちゃマズいだろって言われる人が急増していきました。
すると一回のミスで退場(乗務職場からの異動)となる乗務員が多くなり(会社も教育の仕方が分からないし)、すると今度はミスをしても隠ぺいするようになっていきました。
会社としてもきちんと教育を行わなければいけないということは認識しているので、例えば乗務員の場合だと各種シミュレーターの導入などを図っていきましたが、いまだに初歩的でやっちゃいけないミスっていうのが起きている。
パワハラなんて許されはしませんが、でも本当に抑えておくべき要点に関しては、人がきつく教えないとその重要さが伝わらないのではないかなと個人的には思います。
教えられる方にすれば、悔しくて、腹が立って、情けない思いをすることもあるけど(私もそうだった)
でも本当に重要な部分だけでもきつく教える必要は絶対にある、シミュレーターなどではなく人が伝えないと理解してもらえない部分はあると思ってます。
せめて鉄道の世界で働くのならば、赤い旗は何を意味しているのかという初歩的であり重要なことはきつく教えないとダメではないのかなと、この手旗合図の出し方とそれを見た人の反応から思いました。