乗務員間の指示や連絡に用いられる合図
私は関西の私鉄勤務だったので、車内での合図には電鈴(ベル)が使われていました。
関西私鉄の多くは軌道法で開業したためにベルを用いているという記事をよく目にしますが、南海電鉄は軌道法での開業ではなかったように思いますがベルを用いていますし、関東の私鉄は国鉄と同じく発車合図は戸閉め表示灯(合図灯)の点灯で、のちにブザーを設置したという流れだと聞いた記憶があり、軌道法=ベルというのは眉唾物かなと個人的には思っています。
車掌になってしばらくした頃ですから、1983年頃だったと思います。
それまでは車内電鈴合図や気笛合図が大量にあって実務上弊害が出てきたことに加えて、車両に乗務員室間のインターホンが整備し終わったこと、ホーム上と各駅の駅務室や助役室とを結ぶ音声呼出電話機(受話器を上げて話せば相手に聞こえる、テレポンとかテレスピと呼んでいました)も整備されたこともあり、私が在籍していた会社では合図を大幅に整理しました。
以下は国鉄(JR)の車内合図ですが
ブザー | 合図の方式 |
ブザー試験 | ・―・・ |
ブザー良好 | ・ |
進出さしつかえない又はよい | ― |
支障がある | ・― |
停止位置をなおす又はなおせ | ・・― |
電話機にかかれ又は打合せしたい | ―・・― |
後方防護せよ又は承知した | ・―・(気笛合図と併用) |
停電 | ―・― |
ブザーの取消し | 乱打 |
車掌スイッチを「閉じ位置」にした又はせよ | ・・ |
戸締め用切替えスイッチを取り扱ってよいか又はよい | ・・・― |
私が勤務していた会社では合図の方式がかなり違っていましたが、これ以上に大量の電鈴合図がありましたが以下のように大幅に整理されました。
運転士に出発しても良い 車掌に出発しても良いか | ・・ |
車掌スイッチを切り替えた | ー |
車掌に後退しても良いか 運転士に後退しても良い | ・・・ |
停止せよ | ー(長く鳴らし続ける) |
至急停止せよ | 乱打 |
規程に定められた電鈴合図はこれだけに整理されましたが、実際の運用として乗務員間では、
運転士が車掌に対して、旅客がドアに当たりそうだから再開扉しろ | ー |
運転士が車掌に対して、運転士から見える範囲の乗降は完了している | ・ |
停止位置に止まらずホームを出そうだから、ドアを開けるなと車掌に知らせる時 | 乱打 |
車掌が運転士に対して、通過駅だから止めるなと知らせる時 | ・・ |
などがありました。
私がいた会社では電話(インターホン)に出ろという車内電鈴合図は「・・・・」だったので間違えることがよくあり、廃止されていまではインターホンの呼び出し音が使われるようになりました。
また運転士から「停止位置を修正する」とか、車掌から「停止位置を修正しろ」といった電鈴合図もありましたが、車掌からのこの合図を「出発しても良い」の合図と勘違いして出発させてしまい、結果として客扱いができず誤通過となる事案があったことから、インターホンで打ち合わせするように変更されました。
気笛合図
気笛合図も昔は本当にたくさんり、通過気笛もその一つでした。
上りは長短長(パーン、パン、パーン)で、下りは短長(パン、パーン)という通過気笛をホームにかかるまでに吹鳴することが規定されていました。
通過気笛に関してはそちらの記事を見ていただくとして…
私がいた会社で今でも残っている気笛合図は、係員を呼び寄せるときに吹鳴する合図だけ(適度三声)
その他はどのような場面でどのように気笛を吹鳴するのかは決まりがなくなり、さらに軌道内作業員に対しての気笛吹鳴も原則廃止されたので、気笛合図は実質なくなったような感じです。
一応は事故回避のために吹鳴する気笛は単急(パンパンパンパン…)で鳴らすように教育はされていますが、規程の上では鳴らし方までは指示されていませんでした。
なのでただ長く気笛を鳴らすだけでも問題ありませんし、ビビッて気笛ペダルを踏み続ける運転士もいるようですしね。
係員を呼び寄せるときの気笛合図は今でもありますが、ホーム上に設置されている音声呼出電話機(テレスピ)で話をすることがほとんどです。
昔は気笛の鳴らし方で、この運転士はあの人だ!なんて分かったものですが、今は気笛に個性なんて出ませんよね。
入場番線を知らせる電鈴合図
昔は複数の進路のある駅へ入場するとき、運転士から車掌に対して電鈴合図を送っていました。
私が乗務員になった時はすでに規程にはありませんでしたが、元々は規程に定められていたものだったようです。
2番線とか4番線など偶数の番線へ入場するときは | ・・ |
1番線とか3番線など奇数の番線へ入場するときは | ・ |
昔は車掌にはスタフ(時刻や列車種別、入場番線などが書かれています)というものがなかった、私が勤務していた会社。
そこで運転士が場内信号機を確認した時に、車掌に対してベルを使って入場番線を知らせていたのです。
確認した車掌は運転士に対して同じように、偶数番線の時は・・ 奇数番線の時は・ と送り返していました。
車掌が間違えてホームの無い側のドアを開けないようにするためです。
私が車掌になった当時は、まだ入場番線を知らせる電鈴合図を送ってくる運転士がほとんどで、規程からはなくなったけどより安全のためには良いことだと思って乗務していましたが、私が運転士になってすぐのころにこの合図を厳禁とする通達が出て、完全に消え去りました。
たまたま両側にホームのある駅で反対側のドアを開ける事案が多発してしまい、ベル合図を送って少しでもミスを防ぐほうが良いのになって運転士の間でよく話をしたものですが。