車両の過渡期
私が運転していたのは2014年までですので、もう10年以上昔になります。
なのでその間に登場した新しい技術を用いた車両は担当していません。
10年も経過すると新しい技術が出てきますし、その分操縦のしやすさや乗り心地も改善されていると思います。
私が運転していた時代は車両の過渡期にあったというか、いろいろなタイプの車両が混在していた時期で
(他社と比べれば大したことはないかもしれませんが)
なおかつバブルがはじけて新車を作ることが極力抑えられていた時代でもあり、見た目だけよくするリフォーム車両(一般的にはリニューアルと呼ぶようですが、見た目だけ誤魔化しているから乗務員の間ではリフォームと呼んでいました)
2ユニットの編成で機器類の交換が片側のユニットだけ行われる中途半端なリニューアル編成もあって、本当に運転士泣かせな編成も登場していました。
片側のユニットの機器類だけ交換・リニューアルされた編成
例えば6両編成の電車でモーターを積んだ車両(電動車)が4両あるとします。
ひとつの主制御器で2両の電動車のモーターを制御するとき、この編成には主制御器が2つ積んであります。
この主制御器を中心としたひと固まりをユニットと呼んでいます。
(何という大雑把な書き方……)
車両の定期検査と更新工事を行って工場が戻ってきた車両。
見た目はピカピカでパッと見は新車に見えてしまうかな?
戻ってきてすぐに担当したわけですが、ノッチをオフにすると微妙に後部から突かれるような気がします。
そして駅に停車させようとブレーキをかけると、やはり少し後部から突かれるような軽い衝撃を感じます。
この時点でイヤだなと思っているわけですが、速度が低下してきて電制が失効して空制のみになるタイミングでかなり強い衝撃が伝わってきます。
(界磁チョッパ車で約25キロで電制が失効します)
そして最後の停車する寸前に全緩めをいつもと同じタイミングで行うと、ゴツンとした衝撃とともに停車します。
その後も同じ感じで衝撃が伝わってくるので、あれやこれやと試すわけです。
ノッチをオフする時はどうしようもないので対策が取れませんので、ブレーキをかける時にはいつもより少し距離を取って1段だけブレーキを入れて、その後に所定のステップ数まで入れることで衝撃を回避する。
電制から空制のみに変わる時にも、通常より低い段数のブレーキを入れておくことで衝撃を和らげる。
それでも若干マシになる程度なのわけですが。
そして最後にブレーキを全緩めにするときですが、いつもタイミングだと後部のユニットではブレーキが残っている状態のように感じたので、後部のユニットに合わせて早めに全緩めにすると、前側のユニットでは早すぎることからピタッと止まらずに転がってしまう。
折り返しで乗務場所を代わって運転すると、やはり(乗務場所を代わっているから)前側のユニットはこれまでのタイミングとは少しずつ違っていることが分かり、その後も悪戦苦闘しました。
乗務区に戻ってから車両関係の方に聞くと、片側の主制御器を更新まではしていないけど、言ってみればオーバーホールはしたとのこと。
ほかにも片側はMGなのに触った側はSIVだったり、CPも片側は従来のタイプのままで触った側は静かなタイプのもに交換されているし。
今はおそらく編成で機器類を統一しているとは思いますが。
連結器が原因で衝撃が発生することも
通常は支線で使われている編成を、編成繰りがうまくいっていないことから本線に回すこともあります。
支線と本線では連結両数が違うために2編成を連結して使うのですが、たまたま当たった編成はおそらく連結しての使用が考慮されていなかったのだと思いますが、密着連結器ではなく自動連結器を装備していた編成。
自動連結器って遊間(隙間)があることで起動時にも制動時にも衝撃が発生しやすいのです。
後ろから突かれるというような生易しいものではなく、思いっきり後ろから押される感じで起動しますし、ブレーキをかけても両編成のブレーキの癖が原因しているのかずっと前後に揺れていて、ガンガンガンガンとずっと衝撃と音が伝わってきます。
起動時の衝撃は停車させる際にいかにフワッと止めるかで変わってきますので、かなり慎重に止めようとするのですが、前後の揺れと音と衝撃が感を狂わせるのです。
この電車を運転していて駅長室にクレームがあったし、他の運転士は駅に止めた時にホームから乗務員室の落とし窓を叩かれて「へたくそ!」と怒鳴られたとか。
古い抵抗制御の車両でしたが、もうあんな編成は運転されてはいないでしょうね。