乗務カバン
乗務カバンというよりは胴乱という名のほうが知られているかもしれませんね。
ちなみに胴乱とは長方形の形をした皮や布でできた袋のことらしく、鉄砲の弾丸を入れるために使われたもので、なぜか乗務カバンの名前として使われるようになっています。
会社によっては乗務カバンを支給・貸与していますが、私が勤務していた会社では支給も貸与も無し。
なので個人で好きなカバンを購入してきて勝手に使っている、そんな感じでした。
JRなどではアタッシュケースのような乗務カバンを携えていますが、いったい何が入っているのだろうって不思議に思うこともあります。
なにせ私が勤務していた会社ではカバンなんて持たずに手ぶらで乗務している人がいるほどだったので、あんな大きくて重そうなカバンなんて何に使うの?と思ってしまうのです。
一般的には規程類や乗務手帳、故障時や非常時のマニュアル、会社によってはブレーキハンドルも入れているようですね。
小さなセカンドバッグで乗務
私が車掌になった昭和50年代は、手ぶらの乗務員と小さめのセカンドバッグを持つ乗務員とが拮抗していました。
カバンの中身はダイヤ(列車運行図表)や行路表(仕業表)に乗務手帳くらいですね。
※乗務手帳も私が車掌になった頃は無かったけど
運賃表や会社支給の旅客案内用のガイドブックみたいなものも入れていたかな。
ダイヤは小さく折りたたんでB6サイズ(128mm×182mm)にして、ダイヤが傷まないようにブックカバーを付けていました。
こんな感じでしたから小さめのセカンドバッグで十分事足りていました。
車掌は車内補充券(車掌が販売する切符)を携帯していましたが、カバンには入れずに制服のポケットにしまっていました。
カバンだと休憩室の棚などにポンっと置くことが多いわけですが、たまにいるんですよ、手癖の悪い人が。
車内補充券を紛失というかパクられたりなんかしたら、それこそとんでもない額の弁償金が付いて回りますからね。
マスコンキー(電車運転用のカギ)や忍び錠(車両の各部を鎖錠するカギ)はズボンのベルトに止められるキーホルダーに取り付け、運転時計は制服のポケットにしまっている人が多かったです。
カバンを持たずに乗務していた人の大半はダイヤや乗務手帳は制服のポケットに入れていたのですが、一部の人はスタフだけを持って乗務していた人も。
他の会社の乗務員と比べると、とんでもなく“軽装備”だったと思いますよ。
というのも、一般的に乗務カバンに入れられている規程類(運転取扱い心得など)は、私の会社では乗務区のロッカーに入れておけという考えでしたし、その後は乗務中に取扱いについて疑いのある時に参照できるようにと、各車両に積み込むようになりましたから、乗務員の装備はいつまで経っても軽装備のままでしたから。
どんどん大きくなる乗務カバン
私が助役になった頃、手ぶらで乗務する乗務員は数人だけになっていました。
乗務カバンもどんどん大型化していき、小さなセカンドバッグを使用している乗務員は少数派になっていました。
ショルダーバッグを持つ人が多かったように思いますし、中にはリュックサックの人もいました。
運転士だと故障時のマニュアルなどを入れている人もいたし、会社が発行する各種パンフレット類をマメに収集しては乗務カバンに入れている人もいました。
大きめのショルダーバッグがパンパンになるほどさまざまな資料を入れている人もいましたしね。
私は乗務カバン(小さなセカンドバッグ)にはダイヤ・行路表・乗務手帳・運賃表・交通安全のお守り・カロリーメイト(またはソイジョイやスニッカーズなど)・目薬・ストッパ(お守りのように入れているお薬)を入れていました。
そういえば大昔の車掌の中にはスポーツ新聞や単行本(小説)だけを持って乗務していた人もいましたよ。
乗務中に運転台後ろのカーテンを閉めて、運転台に座って本を読みながら乗務している、そんなふざけた人もいました。