苦情が多かった車掌の手笛
私が車掌の頃は、ドアを閉める前に手笛(呼子笛・ポリス笛)を吹いて旅客に出発を知らせるという決まりになっていました。
ところがこの手笛に関する苦情が大変多かったことから、どこの会社も原則手笛を省略する方向へと変わっていきました。
もっとも多かった苦情がうるさいというもの。
車掌の横を通った瞬間に手笛を思いっきり鳴らされたりすれば、そりゃたまったものじゃないですからね。
そして、人間に対して笛で指示するとはどういう了見だ!というのもありました。
同じ趣旨で家畜扱いするなと、直接お客さんに絡まれたこともありましたしね。
出発メロディの登場
多くの会社ではおもな駅に出発メロディを導入するなどして、手笛の必要性を下げていった感じがあります。
今は列車の編成両数も長くなり、手笛を思いっきり吹いたところで先頭車まで届くはずもなく、そういった意味では無用なものになっていたのかもしれません。
私が担当していた路線では出発メロディが導入されていた駅が少なく、マイクを車外放送側へ切り替えて乗降促進を行う場面も多かったですね。
駅に停車していた時に運転台に座りながら
「今日の車掌はよく喋るなぁ」
なんて感心することもありましたから。
ちなみに私が車掌の時には、外へ向けてマイクで放送することなんてほとんどありませんでした。
車掌さんの中には手笛を吹くときにマイクを車外放送側へ切り替えて、笛の音色をスピーカーを通して先頭車まで聞こえるようにした人もいましたよ。
時代の移り変わりを感じます
私は運転士になってからも手笛を常に携行していました。
非常時には声を荒げるよりも、笛を使って避難誘導するほうが効果があるんじゃないのかなと思ってのことです。
幸いなことに、そういった場面で手笛を使うことはありませんでしたけども。
車掌になった時には今でも手笛は支給されていると思いますが、持たずに乗務している車掌さんが多かったような気がします。
今の車掌さんは知らないと思いますが、私が車掌になった頃は上りと下りで手笛の音色を変えなくてはいけませんでした。
長一声(ピーー)と短長一声(ピッピーー)に分かれていたのですが、私は車掌の研修中よく短長一声が長短一声(ピーーピッ)になってしまい師匠に怒られました。
それがいつしか上り下りともに長一声になり、やがて手笛は吹かなくなる。
時代の移り変わりを感じます。