昔の古い車両は全体的に重くて重心が低い位置にあったため、少々の風にはビクともしませんでした。
それが車両の軽量化が叫ばれるようになり、ボディはアルミやステンレスで台車はボルスタレス。
なのに空調設備は昔の大きなタイプのものが屋根に乗っかっている状態では、必然的に重心の位置が高い場所になってしまいます。
すると横から強風を受けてしまうとどうしても揺れが大きくなり、昔の車両より脱線転覆の危険が大きくなってしまいます。
車両メーカーはきちんと計算したうえで車両を設計し製造しているので、実際にはそう簡単には脱線転覆はしないはずです。
でも運転していると、新しい車両ってボディが浮き上がっている感覚を感じてしまいますし、ちょっと怖いなぁって思うこともありました。
最近の車両はボディは軽くはなっているけど重心の位置が下げられている感じがするそうで、一時期の車両ほどの怖さはあまり感じないらしいのですが。
脱線とか車両が浮き上がっているように感じることは古い車両ではあまりなかったのですが、古い車両でも強風時には太刀打ちできないことがあります。
それは強風による飛来物です。
地下鉄などの第三軌条を除き、一般的には架線を張ってパンタグラフから集電する方式です。
この架線って周囲に遮るものがない場所に張られているため、風によって飛ばされてきたものが引っかかってしまう事態がどうしても起きてしまいます。
そしてパンタグラフって片手で下げることができるくらいのバネの強さで上がっているので、意外と弱いものなのです。
架線に飛来物があってパンタグラフが接触してしまうと、意外なほど簡単に壊れてしまうのです。
強風の中を電車を運転していたのですが、道路と立体交差するために築かれた築堤を走行中に、前方にかなり大きなビニール袋が風で飛ばされていることを確認しました。
その高さから架線には引っかからないだろうと判断し私はそのまま通過していきました。
しばらくすると列車無線で
「××駅~〇〇駅上り線の築堤付近、架線からひも状のものが垂れ下がっているという情報があります。付近を走行中の列車は最徐行で運転し、状況を確認後指令に報告してください」
その無線を聞いたときにちょっと嫌な感じがしたのですが・・・
終点に到着しエンド交換のためホームを歩いていると
「さっきの無線、お前やったんと違うか?」
と先輩の車掌さんに言われ指差す方を見ると、パンタグラフに大きなビニール袋が絡みついていました。
さっき見たビニール袋が架線付近に飛んできてパンタグラフに接触。
そのビニール袋をパンタグラフが引っ張るような感じになって、架線からひも状のようになって垂れ下がったのでしょう。
すぐに無線で状況を報告し、たまたま別件で駅にいた車両課の方が屋根に上ってパンタグラフに絡みついたビニール袋を除去。
※当然ですが停電させてからの作業です
このまま車庫のある駅まで運転し別の車両に振替えることになりました。
検修庫に入れて車両課で検査したところ、パンタグラフはやや横に傾いていたらしいです。
古い車両でパンタグラフも昔ながらの菱形で大型のもの(形式はよく分からないのですが・・・PT42とか43かな?)でしたが、耐えることはできなかったらしいです。
架線に飛来物がすでに引っかかっていれば、すぐにパンタグラフを降下させる処置を取らなければいけないのですが、今回はまだ飛んでいる最中でしたからねぇ。
たまに自動車やオートバイのボディカバーが飛んできて架線に引っかかりますが、接触すればパンタグラフは原型を留めないほどに壊れてしまいます。
ホントにパンタグラフって弱いものなのですよ。