新型コロナウイルスによる自粛などによって、各公共交通機関の収支が相当悪化しています。
空で運行するよりははるかにマシということで、新幹線等が半額で利用できる企画切符がJR東などから販売されています。
四半期決算の内容を伝えるニュース等では収支の落ち込みを前面に出して報道されていましたが、それ以上にセンセーショナルだったのは時間帯別運賃の導入を検討するという報道です。
お客さんの多い時間帯は運賃を値上げするというものですが、本当にこれを導入したらどうなるのでしょうね。
JRの運賃体系は幹線・地方交通線と大まかに分けて、さらに電車特定区間・山手線内・大阪環状線内のほか指定した区間を特定区間として幹線の料金からさらに割引かれたものとなっています。
大都市圏で他の私鉄と並行して走っている路線を中心に、特に割引いて競争力を付けているわけです。
ところが稼ぎ頭の大都市圏の収益で地方交通線(ローカル線)の赤字を埋めているのが現状なので、今回の大幅な減益を目の当たりにした会社のお偉いさん方は、都市部の混雑時間帯の運賃を上げなければ地方交通線の維持どころか会社の経営自体が危うくなると考えたわけですね。
私は私鉄で勤務していたわけですが、車掌や運転士そして助役をしていた者から見た感想では
「仕方がないのかな・・・」
が本音です。
朝の通勤通学で鉄道を利用する人の大半は定期券だと思われます。
ご存じのように定期券は割引率が高いわけですが、通勤通学の時間帯って会社側から見ると費用が相当かさんでいるんですよね。
割引率が高い方々が多く利用しているのにその時間帯の運転のために車両を増備したり、人件費をかけているわけですから。
日中は車両の多くは車庫で休んでいる状態ですし、働いている人間も少ないです。
私自身も働きながら漠然と
「費用が多くかかるラッシュ時間帯なのに割引かれている定期券で多くの方が乗車し、閑散時はラッシュより費用が少なくて済むのに乗車する大半の人は割引のない普通の切符で乗車する矛盾」
ってことを、乗務しながら思ったりしました。
乗客の側からすれば、ラッシュの時間帯なんてギュウギュウ詰めでめちゃくちゃサービスが悪いのだから、料金が安くて当然だろうと言われそうですが。
でもホテルなどでは繁忙期は料金を高くし閑散期は料金を下げています。
そして繁忙期のほうが当然のごとくサービスは悪いのですが仕方がないとあきらめているとい構図。
発想としては同じなんですけどね。
現実に立ち戻って考えてみると、現行の定期券や乗車券の制度では時間帯別運賃は実現できません。
まさか定期券をラッシュにも使えるタイプと閑散時にだけ使えるタイプに分けて発行だなんてねぇ。
発行はできたとしても、駅員や乗務員とのトラブルは必至でしょうし。
「なぜ定期券なのに乗車できないんだ!」
みたいな言いがかりをつけられる駅員の立場にもなってほしいですね。
となれば現実的には定期券・乗車券・回数券という区分をなくしてしまって、Suica・PASMO・ICOCAといった交通系ICカードがないと乗車できない。
または乗車券は残すものの最も高い運賃でだけ発売するとか。
首都高速道路や阪神高速道路で実施している現金で利用する場合は一律料金で、ETC利用の場合は区間ごとの料金みたいになっていくのかもしれないですね。
交通系ICカードならば駅側の機器の設定だけで時間帯別の料金の収受ができると思いますから。
あとは地方交通線という一括りの料金体系になっている部分は、路線ごとの運賃になっていくかもしれないですね。
〇〇線は加算運賃がいくらで××線の加算運賃はいくら・・・みたいなことが現実になっていくのかもしれません。
東武や近鉄のように営業している線路長が長い私鉄は、JRと同じようなジレンマに陥っているのかもしれないですね。
私が勤務していた会社はそれほど線路長は長くないのですが、それでも支線によっては収支が昔から悪いままといったところもありますし、収支に合わせた運賃体系が構築されていく可能性はあるかもしれません。
「JR東日本らが検討する「時間帯別運賃」は国を衰退させる愚策である理由」という記事も読みましたが、国などの関与を強めて・・・って昔の国鉄、いわゆる親方日の丸体質に逆戻りさせるだけじゃないのかなとも思います。
今後10年以内には鉄道は劇的な変化を迎えるのかもしれません。
駅は完全機械化によって無人化、列車も自動運転によって運転士は必要なくなり、たんなる前方監視者が座るだけ。
運賃も交通系ICカードによって自動的に割引や割増しされて収受される。
収益的に厳しい路線の大幅値上げか営業撤退(自治体に任せてしまう?)。
どうなっていくのでしょうね。。。