私が運転士の見習だったころのはなし-3
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私が運転士の見習だったころのはなし-3

前回の記事で、私が所属していた乗務では交番表や仕業表を乗務員が勝手に変えていた話をしました。

交番表も仕業表も無視 指定されたシフトを勝手に変更する乗務員
私が在籍していた乗務区では、ある特定の支線ばかりを乗務する乗務員がいました。 本来は交番表の順番通りに乗務しなければいけないですし、勤務指定表(出勤簿)も交番表どおりに仕業番号順に氏名が掲載されていました。 ところが乗務員同士での仕業の交換...

勝手に変えて自分が好きな路線ばかり乗務することが当たり前のような環境だったのです。
特定の支線ばかり乗務していた運転士はよく
「本線なんか運転したらスピードが速くて目が回るぞ」
とか
「あかんあかん、なんぼ速くても80km/hが限界や」
とか
「あんなスピードで運転してて人を轢いたら大変なことになるやないか」
なんてことを平然と言う方がいっぱいいました。

でも支線を運転しているからといってゆっくり走るわけでもなく、速度オーバーなんて当たり前のような状態だったし、突っ込みすぎてブレーキが間に合わずに過走(いわゆるオーバーラン)することも多かったです。
このあたりの話はまた機会があればじっくりとしてみようと思います。

 

 

ほぼ毎日同じ支線ばかりを運転している運転士たちって、交番表どおりに乗務している運転士よりその支線ではやっぱり運転が上手かったりするんですよね。
まぁ毎日運転しているのだから当然と言えば当然だけど。

「この列車は終点で本線と連絡するから、ちょっと早めに着けなあかんねん」

“ダイヤ通りにつければ良いんじゃないの?”

「次の曲線は+10で走って」

“速度オーバーを指示してくるし”

「〇本目の電柱を通過したらフルノッチな」

“そこでフルノッチを入れたら最後部はまだカーブにかかってるんと違う?”

「80まで引っ張って」

“ここって駅間最高が65なんやけど”

「次の踏切上で電車を止めて」

“確かに先の場内信号機は赤だけど、こんな手前の踏切上に止めなくても良いのに”

各運転士見習には師匠(指導運転士)が一人いるわけですが、支線についてはなぜだか“勝手に専属運転士”に見習を預けるならわしがあって、私も支線ばかりを乗務している方に付いて運転を習いました。
それでもって指示も無茶苦茶なんだと思いながらも、いかんせん見習の分際では何も言い返せません。
というか、見習は師匠が言ったことはすべてYesと答えなければなりません。
明らかに“黒”だとしても師匠がこれは“白”だと言えば、見習の同じように“白”ですと答えなきゃいけない。
そんな風に教習所でさんざん刷り込まれましたからね。
それはもちろん本来の師匠だけではなく、その日だけの代理の師匠であっても同じなのです。

 

 

なぜ本線と連絡するからといって支線の電車を早着させるのか
これはダイヤ通りに到着させた場合、お年寄りなどによっては乗り換えが間に合わないことがあるためだとか。

カーブを抜け切る前にフルノッチを入れるのは、昔の電車はカムモーターによる進段に時間がかかるため、指示された場所でノッチを入れておけば最後尾がちょうどカーブを抜けたところで速度が乗っていくから。

場内信号機よりかなり手前の踏切上で停車させるのは、場内信号機の直近で停車させると最後部の車両が半分だけ踏切にかかり、閉まっている踏切を無理に横断する人と進行(離合)してくる列車との接触を回避するため。

速度オーバーは・・・

私が運転士見習だったころは、こんな感じで現場での取り扱いをいろいろと教わることが多かったです。
今では誰も知らないこと、誰も教えられないことなのですが。

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