2021年4月19日、JR北海道の函館線・蘭島~余市間で、大雨のために徐行指示が出ていたことを失念した運転士が通常速度で運転したとのこと。
大雨による徐行で25km/h以下が指示されていたのだが、通常の速度である90km/hで運転したようです。
さすがに最高で65Km/hオーバーでの運転ですから、今のご時世ではなかなか許してもらえないかもしれないですね。
昔は徐行指示などには運転通告券を発行していました。
小さな紙片ですが、徐行の区間と速度が書かれていて、徐行の理由も備考欄に書くことになっていました。
私は運転通告券を受け取ると、運転中に見やすい場所に置いていました。
そうすることで失念する可能性がぐんと下がりますから。
運転通告券は助役以上の役職の人が発行することになっていて、例えばA駅からB駅までの区間で徐行指示を出す場合、A駅に最も近い助役配置駅で発行することになっていました。
その他にも踏切の遮断桿が折れている場合や臨時列車が先行しているとき、臨時停車の指示などすべて運転通告券が発行されていました。
ただ最近はどこの会社でも駅員の配置数の減少や無人駅の増加によって、運転通告券の発行が難しくなっているという現状があります。
そこで運転通告券の代わりに列車無線を使った運転指令からの通告や、乗務前の詰所等であれば担当助役からの口頭での通告が多くなっています。
運転本数が少なければ運転指令からの通告も各列車ごとに無線を流すことも容易ですが、運転本数が多いと運転指令から各列車1本1本に通告なんてできませんので、10分おきとか15分おきに定時連絡のように無線を流したりしています。
まだ無線ならば通告が必要な個所の近くで聞くことになるのでまだマシなのですが、詰所などで担当助役からの口頭での通告となると運転士は失念しやすくなります。
例えば出勤した午前10時ごろに
「列車番号○○のとき、C駅に臨時停車があります」
そのC駅へ臨時停車する時間が16時20分なんてことも実際にあるんですよ。
忘れないように手帳に記入はするのですけど、運転中に手帳を見ることはできませんから、結局記憶だけが頼りに。
何せ今は駅に停車中に確認のために乗務手帳を開いただけで
「運転士が駅に停車中に本かノートを開いていた!」
ってすぐにクレームが寄せられる時代ですしね。
話がそれましたが
今回のJR北海道での速度オーバーは通告自体はされていたようで、余市に到着以後は運転士が思い出したので徐行速度の25Km/hで運転したそうです。
おそらく大雨の徐行ですから乗務前に担当助役からの口頭での通告で、乗務手帳には記入したのだが・・・というケースだったと思います。
せめて口頭ではなく担当助役が運転通告券を発行し、運転士は運転中つねに視界に入る場所に置くことができていれば防げたミスなのではと思います。
ちなみに運転通告券は、乗務を終えて詰所や乗務区に入ったときに返納する決まりになっていました。