タイトルにちょっと刺激強めなことを書きましたが、何十年も車掌や運転士をしてきた身からすると、これが実感です。
2021年8月18日7時43~46分頃、拝島7時発西武新宿行きの沼袋~下落合間で運転士が居眠りしていたと西武鉄道が発表。
乗客からの指摘で表沙汰になったわけですね。
2月にも池袋線で運転士の居眠り運転が発覚したこともあり
「全乗務員に対しても、当該事象を周知するとともに、改めて同様の指導を徹底してまいります」
見つかっちゃった運転士は勤務から外されているでしょうね。
私が勤務していた会社では一週間以上乗務から外されて会議室に閉じ込められ、連日取り調べをうけて、会社が用意した本の会社が指定した部分だけを読んで感想文を書かされて、あとは反省文を書かされて。
場合によっては別の職場へ異動(よくて乗務から駅へ、通常はまったく関係のない部署)させられることもありました。
ぶっちゃけ居眠り運転をしたことがない運転士なんて、すべての運転士の一割にも満たないと思います。
もちろん私も睡魔と格闘したものの負けてしまって、ということは何度もあります。
朝食を食べない、ガムやフリスクを口に含む、鼻歌を歌う、立って運転するなどいろいろなことを試してきましたが、ことごとく返り討ちにあっていました。
立って運転していてもウトウトとしてしまい膝カックンになりますからね。
これまでも書いてきましたが、運転士や車掌の乗務中の居眠り対策で最も効果的なのは、泊まり勤務時の仮眠時間の確保です。
私の勤務先では勤務終了から勤務開始まで6時間は確保してあったとしても夜はお風呂くらいは入りますし、昔ならビールを飲んでいましたが今ならば水か清涼飲料水くらいは飲みますよ。
そして朝は身支度もしなきゃいけないし、女性だとお化粧も必要です。
勤務から勤務まで6時間あったとしても、よく眠れて4時間くらいでしょう。
ほとんどの人は2時間くらいしか寝ていないかもしれません。
だいたい職場で仮眠をとっているわけですから、起きた瞬間に仕事モードに頭を切り替えなきゃいけません。
通勤時間0分ですからね。
家を出てから電車に乗って職場へ出かける間に徐々に目を覚ませばよい、普通の会社員よりもこういうところもシビアなんですよ。
前々から言っていますが、睡眠がまともに取れない仕事です。
会社として居眠り運転を本気で無くすつもりがあれば、夜勤務終了から朝勤務開始までの時間は短くても8時間は空けないと。
すると乗務員の数を増やすか、最終電車の大幅な繰り上げと始発の大幅な繰り下げしか方法はありません。
だいたい夜間眠る時間が短すぎるのに、乗務中に居眠りするなと指導されたところでどんな意味があるの?
世間に対しての鉄道会社のポーズですからね。
コロナ禍で最終電車が多少早くはなっていますが、これを最低でも一時間は早くするとともに、始発も最低でも一時間は遅くしなきゃ乗務員の仮眠時間の確保なんてできません。
まさか今のご時世に乗務員の数を大幅に増やすなんて鉄道会社はないでしょうし。
「プロとして、前日は体調を整えておくのが当たり前だ!」
って居眠り運転を指摘した旅客に言われることがありますが、残念ながら居眠りしないように体調を整える時間なんて乗務員にはないのです。
「長距離トラックのドライバーは夜通し走っているだろ!」
これは私が助役のときに旅客に言われたのですが、眠たいからSAやPAに入って仮眠が取れればよいのですが、電車の運転士や車掌は眠たいから次の駅にちょっと止めて寝ます・・・というわけにもいきませんから。
結局鉄道会社は口だけ出して、あとは精神論のみ。
そして乗務中の居眠りが見つかったら用済みで、他の部署に飛ばされる。
そしてまた現場には
「各自自覚をもって乗務するように」
との口だけの指導ですべて終わらせる。
どう考えても鉄道会社が乗務員の居眠り対策を本気では考えていない証拠です。