JRのsuicaやICOCAなどJR系の交通系ICカードは、利用範囲を自社以外にも積極的に広げています。
しかし地方を中心とした交通系ICカード事業は費用がかなりのネックになるようですね。
広島県の鉄道やバス、フェリーやタクシーなどで利用可能だったPASPYですが、2025年3月までにサービスを中止すると発表されました。
理由は更新の際に必要な金額が多大であること。
PASPYの場合は7~8年ごとにシステムの更新が必要で、その総額は約50億円。
そしてシステムの利用比率に応じて各社がこの費用を負担するのですが、広島電鉄がもっと多くの金額を負担しており20億円以上になるそうです。
この定期的に必要な莫大な費用を嫌い、広島電鉄がPASPYから抜けてQRコードによる乗車システムへの移行を表明。
PASPYのメイン企業だった広島電鉄が抜けることで事業の継続は難しいと判断し、PASPYはなくなることになったようです。
広島電鉄は独自の決済システムを導入することを発表していますが、広島高速交通(アストラムライン)はICOCAを導入するらしく、各社で対応が二分するかもしれません。
システムの更新はソフトでも必要ですが、ハードも当然定期的に更新していく必要があります。
広島電鉄のように保有車両が多く、市内の路面区間がメインの会社では、車両に搭載している機器の更新に相当お金がかかると思います。
JRでは無人駅でも駅にICカードの読み取り機を設置することで、機器の数をある程度抑えることができていますし、一部の路線では運転本数が少ないことから車両搭載型としてさらに機器の設置台数を抑えています。
今後地方で交通系ICカードを積極的に入れていこうとすれば、JRのsuicaやICOCAなどに頼るか、もっと簡易なQRコード決済を導入することになっていくのかな。
また現状でPASPYのように一部のエリアのみで利用できる交通系ICカード(IruCaやくまもんのICカードなど)でも、PASPYと同様に更新費用と収益を天秤に載せて今後どのようにするのかを考える時期が来そうな気もします。
現金を管理する人員を減らすことができたり、券売機の設置と保守費用が不必要となり、さらに駅員だけではなく本社などの管理部門の人員を減らすこともできたわけですが、交通系ICカードのソフトやハードの更新に莫大な費用が必要となるとあまり導入するメリットがありません。
スケールメリットで考えた場合、JR系の交通系ICカード(suicaやICOCAなど)と関東私鉄の交通系ICカードのPASMO以外は生き残りが難しいのかもしれないですね。
※個人的にPiTaPaは失敗だろうと思っています。勤務していたときは社員証とPiTaPaが一体化したものを持たされていました。おそらく会員数があまり伸びないことから無理やり社員証と一体化させて持たされたのでしょう。それでも私はPiTaPaなんて使いませんでしたけどね。利用額が給料から直接引き落とされるのも嫌だったし。今はスマートICOCAとモバイルsuicaを利用しています。
地方の鉄道を取り巻く環境って本当に厳しいのだろうと思います。
IC乗車券の導入するにしても導入費用とランニングコストに更新費用、無人駅の増加、路線の廃止。
これから10年の間にどれほど変化していくのかな。