2005年4月25日に発生した、JR西日本福知山線(JR宝塚線)塚口~尼崎間で発生した列車脱線事故。
死者107名、負傷者562名を数える大惨事であり、まさか平成の時代になってこんな事故が起きるとは思ってもみませんでした。
毎年福知山線脱線事故に関することを書いていますが、結局はJR西日本の時間に対する固執がこのような事故を招いたわけです。
JR西日本のドル箱路線は大阪環状線と、京阪神を結ぶ東海道・山陽本線(JR京都線・JR神戸線)です。
ご存じのように京阪神間は京阪・阪急・阪神といった私鉄が並行して走っており、とにかく私鉄から乗客を奪うことを第一に考え、運賃は特定区間を設けて対抗できるように、そして所要時間はとにかく短くを目標に経営されていました。
その象徴が「昼間特割きっぷ」であり「新快速」です。
さらに利便性を向上させるために、尼崎駅での福知山線・東西線(学研都市線)・JR神戸線との相互接続の利便性をさらに高めることに注力していきます。
元々かつかつなダイヤ編成なのに、さらに接続を図るために遅れが許されないという状況。
そんな中で福知山線脱線事故を引き起こしたのではないのかな。
ちなみに私が勤務していた会社では、昔は他の路線との接続ってあまり重要視されていなかった気がします。
ダイヤ上は接続できたとしても、片方の路線の遅れを他の路線へ波及させないために、接続できなければ仕方が無いって感じでしたから。
ただ
「JRではきちんと接続するのに、お前の所ではちょっと遅れたら乗り換えができないってどういうことや!」
という旅客の声に負けて、遅れても仕方が無いということを前提に、片方の路線で遅れれば他の路線も遅れてでも接続させるというスタンスに変わっていきました。
でもね、遅れても仕方が無いと言いながらも、運転士には圧力をかけてきたりするんですよ。
5分遅れで出発すれば、終点にも5分遅れで到着すれば運転士は規定通りの運転をしているということですが、遅れているのだからもう少し考えて運転しろ、なんて平気で言われていましたから。
だからと言って運転士は速度オーバーして、車掌は各駅でのドアを開けている時間を短くする以外に、遅延回復なんて実質無理なんだけど・・・
あとエンド交換の際には、ホームを走って交代してすぐに折り返し運転しろ!なんて言われる頻度も増加しましたしね。
新幹線は1分以上の遅れを発生させると始末書を書かされるなんて話を、私が運転士をしていた頃に新幹線の運転士をしていた知人に聞いたこともあります。(どこの会社なのかは伏せますが)
この思想が残っているから、新幹線の運転士が運転中にトイレへ行ったときも、三島駅の通過がダイヤより1分遅れていることが指令所に発覚したのでしょう。
※私が勤務していた会社の運転指令の操作卓では、1分以上の遅れが発生した時は自動的に通報されるようになっていました
荒天やダイヤ乱れの時を除いて、JR西日本は在来線で1分以上の遅れを出すと運転業務から外されて、日勤教育を受けさせられるとも言ったいたし。
先日なんて他の列車への影響が無かったけども、回送列車の入庫を遅らせたことで1分の賃金をカットされた元運転士の訴訟で、JR西日本にカットした1分の賃金56円の支払いを命ずる判決も出ています。
回送列車の移動が1分遅れ、運転士の賃金カット…地裁がJR西に56円支払い命令
この判決前の今年(2022年)3月から、このような遅延による賃金カットをしないように運用を見直したとしていますが、時間への固執は福知山線脱線事故以降も続いていたということです。
福知山線脱線事故以降、旅客による運転士の監視がきつくなりました。
規定通りに運転していても、少し揺れただけで速度違反したのではないか!なんて通報する人が多くなりましたし。
なので昔は気にしていなかった運転士も、今では後ろに立たれることを恐怖に感じる人も多くなりました。
私も昔は何も思わなかったのですが、この事故以降は後ろに人がいるというだけでプレッシャーを感じていて、昔より早めに遮光幕を下ろすこともしましたしね。
若い運転士は福知山線脱線事故は入社前の出来事で、何も思わずに運転しているようですが。
福知山線脱線事故が契機となって表向きは変わったように見える鉄道会社ですが、中は昔よりプレッシャーやギスギスした感じが蔓延する職場になってしまった、そんな気がします。