4月12日には関東で2件の架線への飛来物による運転抑止が報道されました。
1件は京浜東北線の北浦和駅付近で、洗濯物のようなものが架線に引っかかっているとして、運転を抑止として飛来物を撤去。
約1時間ほどで運転再開したとのこと。
もう1件は京王線で、高尾山口発新宿行きの普通列車のパンタに布団が引っかかっていることを府中駅で発見。
こちらは約1時間半ほど運転抑止が行われたようです。
架線やパンタグラフに飛来物が引っかかれば撤去しなければいけません。
架線は当然ですし車両の屋根上での作業も感電の恐れがあることから、架線に流れる電気を止めての作業となります。
停電させると電車は動きませんから、停電区間の電車はすべて運転抑止となります。
変電所の場所ごとに切替区間がありその場所をセクションと言いますが、飛来物が引っかかっている場所が含まれる架線の区間、つまりは変電所から変電所までの区間が停電区間となるのですが、その場所は主要駅から主要駅といった運転区間とは異なっています。
このために停電区間より広範囲の区間で運転抑止となることが普通なのです。
今回の2件の飛来物ですが、さいたま市では最大瞬間風速14mを観測したそうで、やはり強風が原因ではあるのですが、台風などの暴風よりはまだ風は弱いです。
でも台風の時には屋外で洗濯物や布団を干すことはまずないでしょうから、台風シーズンの時に洗濯物が架線やパンタに引っかかるというケースはほとんどありません。
昔はよく車やオートバイのカバーが飛んできて引っかかることはありましたけど。
ところが春先はそこそこ強い風が吹くことが多いのですが暴風ではないために、洗濯物や布団を屋外に干すことが多くなる。
少し強めの風が吹くと早く洗濯物が乾くので、好んで外干しする方もいらっしゃる。
普段より念入りに留めておればいいけど、いつもと同じ程度にピンチなどで留めるだけだから、瞬間的な強い風で飛ばされてしまい、架線やパンタに引っかかるというわけですね。
なので春先の日中は洗濯物などが架線やパンタに引っかかる、今回の関東での事例のようなケースが多くなるのです。
私が列車を担当している時に、洗濯物や布団が架線やパンタに引っかかったということは経験はありませんが、公休日に針金ハンガーにかかったままの洗濯物が架線に飛来し、大騒ぎになったことはありました。
針金ハンガーによって架線がショートしてしまい、長時間にわたって運転を取りやめたと(子供の入学式の)翌日に聞いたことがあります。
架線に引っかかった場合、飛来物を撤去して架線に損傷がないことが確認できれば運転再開できます。
ところがパンタに飛来物が引っかかって場合、飛来物を撤去してもそのままその車両を使用することはあまりありません。
通常はその車両を車庫等に収容して、パンタの損傷具合を念入りにチェックします。
見た目では大丈夫そうだとしても、走行中に何らかの不具合が発生してパンタに故障や、それに伴って架線まで損傷すると半日以上は運転できなくなりますから。
通常はパンタから飛来物を撤去したあと、そのパンタは降下させておきます。
万が一に備えてロープでパンタをくくって上がらないようにする措置を取ります。
※パンタグラフの緊締作業
先ほども書いたように見た目には問題なさそうでもひょっとすると不具合があり、通常用いるパンタ降下状態を維持するフックだけでは走行時に上がってしまうことがあります。
走行中にパンタが上昇すれば架線はおそらく断線するでしょうから。
なのでパンタに飛来物が引っかかた場合は、原則その車両はパンタを緊締して収容します。