台風接近が分かっていても計画運休を非難する人がいるけど
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台風接近が分かっていても計画運休を非難する人がいるけど

助役や運転指令

あと出しで計画運休を批難する著名人たち

2023年8月15日に関西を縦断していき、大きな被害も出た台風7号。

前日までに多くの路線で計画運休を発表したわけですが、それに対して異論を言う著名人も多かったようです。

 

古市憲寿氏

「意思決定がブラックボックス。昔は走っていたのになんで今は」

橋下徹氏

「どういうリスク評価をしているのかはしっかり明示してもらいたい」

辛坊治郎氏

「JRの計画運休は旧国鉄時代の名残か。責務も自覚を」
「簡単に止めすぎ…」
「責務を自覚して最小限でいかないと」

ネットニュースのタイトルだけを拾いましたので、発言の肝心な部分をそぎ落としているかもしれませんが、おおむねこのようなことを言ったようです。

 

また2024年8月16日に接近した台風7号に対する計画運休に対しても

猪瀬直樹氏(参議院議員)

「ギリギリまで待って判断すればいい。それが危機管理というもの…」

阿部等氏(ライトレール社長)

「完全運休とせず、旅行取止めを推奨しつつ、大幅遅延を承知の人限りで運行する手もあったのでは」

 

こういった発言をするのも自由ですし、実際に移動できなくて困った人がいるのも事実です。

だったら、前日までに計画運休が発表された時点でこういった発言をしてください。

結果だけを見て偉そうに言うことは誰だってできるのですから。

 

 

台風でなくても強風で危険な状態に

昔は台風が接近することが分かっていても、事前に運休を計画することはありませんでした。

私も何度も台風が接近して暴風雨の中、列車を運転してきた経験がありますが、車両の最前部に乗務している運転士って想像以上に恐怖を感じているものです。

客室とは違って車両の最前部の乗務員室は風によって飛ばされそうとか、巻き上げられそうという感覚をもろに受けています。

風を遮るような建物などがない築堤上や高架上なんて、車両が持ち上がりそうな感覚を感じながら運転していますから。

台風ではなかったけど、強風の中を運転中に高架上で変な音や振動が伝わってきてマズいと思い、非常ブレーキを入れて停車したこともあります。

翌日、口外はダメと念押しされた上で説明された話では、レールにも車輪の横にも傷や凹みがあったので、ひょっとしたら脱線寸前の状態だったのかもということもありました。→風が強いと車体が浮き上がりそうで怖いのです

 

昔は走っていたのに」に対する答えは、昔は安全性よりも運行することを第一に考えていただけにすぎません。

それに近年の自然災害の規模が昔とは違うことは誰もが感じていると思います。

 

 

より安全を考慮すると

どういうリスク評価をしているのかに対する答えは、各鉄道事業者が契約している気象情報会社からの情報をもとに、運転の可否を決定しています。

JRが広範囲で運転休止とするのは、もともと一本の列車の運行区間が長く、危険性の高い区間だけを運転休止にしても車両や乗務員の都合がつかないため。

新快速のように福井県の敦賀から滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県と走り抜けている列車の一部区間だけを運休にするのは難しく、また速度が速いほど脱線しやすいために新快速や快速をまず運休する。

短い路線の場合は車両や乗務員の送り込みができないなど、物理的に運行不可能になるケースも多いです。

主要幹線以外はどうしても路盤や橋梁など施設の脆弱感は否めないため、大雨や強風に対する評価を低くしています。(許容度が低い)

また長距離列車が悪天候に巻き込まれて立ち往生すると、救助や差し入れをしたくても本社や支社から遠い場所ではどうしても遅れがちになる。

それに加えて各方面からその後の措置についてバッシングを受けることが多く、どうしても受け身になることは仕方がないかなと思うし、マスコミなどで著名な方々が、

「なぜ事前に止めないんだ!」

と真逆の発言をしているのを見聞きすることも多く、鉄道社局としては同じようにクレームが出るのであれば、より安全な選択をするのは当然のことだと思います。

動かして被害を発生させるより、動かさずに文句を言われる方がマシですから。

 

JRの計画運休は旧国鉄時代の名残か、なんてこれはさすがにひどいですね。

昔の国鉄はたしかにストなどで頻繁に止めてはいましたが、悪天候ですぐに止めることはなかった。

止めようという発想がなかったから、余部鉄橋列車転落事故なども起きたのですから。

 

簡単に止めすぎとか責務を自覚して最小限でいかないと、という意見は一部は賛成します。

踏切の遮断桿折損や鳥などの小動物との接触での運休は考えものです。

でも台風が接近しているという状況を考えた場合、とりあえず運転しない方が良いと考えるのは正常だと思うし、混乱を極力抑えるために事前に運休の計画を発表することが悪いとは思えません。

ただその災害が去ったあとも引き続き運休を続けるのは改善すべき点ですね。

車両や乗務員の都合が簡単にはつかないことや、線路等の点検に時間がかかるということもあるので難しいのですが、それでも鉄道各社局は早期に運転再開できる方法を考えるべきとは思います。

 

ギリギリまで待って判断しろとか、大幅遅延を承知の人限りで運行しろなんて、現場もお客さんも混乱するだけで何も良いことがない。

このような発想の人が乗車している列車が途中の駅で立ち往生なんてすれば、対応がなっていないとか、なぜもっと早く運転中止の判断が出せないと、今度は真逆のことを言い出しますからね。

〝外野は黙ってろ!〟

交通機関の現場経験のある人ならばみんな思いそうですけどね。

 

運転できるところまで運転した結果は…

台風の暴風雨の中乗務していて突如徐行25キロとか15キロの指示が出たり、急に○○駅で運転抑止の指示が出たりすれば、乗務員自身も不安になりますよ。

お客さんには文句を言われるし、中にはここからタクシーで帰るからタクシー代を出せと車内で絡まれたこともある。

もちろん、運転できる駅まで運転すれば助かる利用者がいることも分かります。

でも下手に動かして車両も乗務員の運用もぐちゃぐちゃになると、そこから正常な状態に戻すにも時間がかかり、乗務区では

「おい、〇番繊に入っている電車を取りあえずお前が運転して来てくれ」

「それどこ行きの電車ですか?」

「それは分からんから、また指令から無線を入れさせるから取りあえず運転してきてくれ!」

とか、

「今入線している○○列車は○○の担当だろ!どこに行った!」

「さっき取りあえず乗ってこいと命令したのはお前だろ!」

こんな状態に陥って、だれがどの電車を担当しているのかも把握できないことになっていきます。

殴り書きで列車番号と運転士と車掌の氏名をメモ書きしていたけど、そもそもダイヤが乱れると列車番号が途中で変わるというか、どんどん充当させていくから元の列車番号が消えてしまって、誰がどの電車に乗務しているのかが分からなくなることが多かったです。

また運転士はどこの路線でも運転できるものではなく、長い期間見習に就いて速度制限や信号の位置、それに信号の展開状況など様々なことを勉強してはじめて運転できるものですし、車掌だって駅や入線するホームによってどちらのドアを開けるのか、直線ホームか曲線ホームか、モニターで監視してドアを開閉するのかなどなどは見習に就いて勉強する必要があり、担当できる路線や区間を明確に分けています。

車両だって装備等の違いによって入線できる区間を決めているわけですから、乗務員も滞留状態だし車両もホームに止まったまま、ならばすぐに動かせ!と言われても無理なこともあるわけです。

 

計画運休はその時だけではなく、結果的に災害が過ぎ去ってからの車両や乗務員の運用を正常に戻しやすく、その後のお客さんへの迷惑も極力抑えられるものだと思います。

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