助役の登用は年に2回あったから
私が勤務していた鉄道会社では、車掌や運転士の登用は試験の関係もあるので年に1回だけ実施されていましたが、助役以上の監督職や管理職の登用は春と秋の年に2回行われていました。
ちなみに助役登用は任命制で、他社に多い試験による選抜ではありません。
通常は助役登用は運転士の中から選ばれますが、年に一人いるかいないか程度で車掌や駅員からも登用されます。
ただ駅員から助役登用される場合はそのほとんどは運転士経験者。
車掌から助役へ登用される人のほとんどは駅の助役として配置され、あまり乗務区に配置はされませんでした。
ただ言えることは、助役からさらに先へ登用される人の9割以上が労組の関係者。
駅長や乗務区長なんて基本的に労組出身者ばかりで、たまに労組とは関係のない人が上位職に就くこともありますがただの〝つなぎ〟で、労組出身者で経験年数などの関係からちょうど良い人がいない時に、半年だけ使われるケースが多いようです。
だから労組なんて信用しているのは労組関係者だけで、ふつうの駅員や乗務員は労組に対して良い感情を持っていない人も多かったです。
4月と10月は助役の訓練がいっぱい
助役以上の登用は4月と10月に行われていた、私が在籍していた会社。
それぞれ4月1日付と10月1日付で辞令が出されるのですが、引き継ぎのほか初めて就く業務の場合は、三出番の見習が必要という決まりがあります。
一出番は24時間拘束の泊まり勤務が一回ですから、計3泊の泊まり勤務での見習が必要。
見習に就くには当然師匠が必要となるので、異動の辞令が出された日から全員が単独で業務を行うようになるまでにはおよそ1か月かかります。
※運転士等から助役へ登用される場合は、3月または9月の1か月間は机上見習があります。
そして各管区ごとにいろいろな研修や習熟訓練が4月10月に集中して行われるのですが、この見習や訓練が乗客にも乗務員にもかなり迷惑なものになることが多いのです。
訓練だから列車が遅れるのは仕方がない……
アイキャッチ画像には分岐器をチョイスしましたが、ポイントマシンの丸い小さなふたを開けて、そこにハンドルを差し込んで回すことでポイントを転換する手回し訓練というものがあります。
通常は自動で転換するのですが、故障などの影響で自動転換できなくなった時のために行います。
新しく助役が配属された4月10月に行われることが多い訓練なのですが、とにかくメチャクチャ列車が遅れます。
7回回して先端軌条の密着が解けて、次の7回で転換していき、次の7回で先端軌条が密着します。
合計21回も回すのですが結構重くて大変なのですが、何せ新しく助役になった人たちが張り切って訓練に参加するので、確認喚呼もオーバーなアクションと大声になるし、何よりかなり慎重になるのです。
だってきちんと転換していなかったら列車が脱線しますから。
すると2分や3分の遅延は当たり前の状態になっていき、私が経験した最大の遅延は7分というものがあります。
10分間隔で運転している時間帯に7分の遅延ですからね。
この時はさすがに駅長をはじめ乗務区長あたりも謝罪に来ましたが、本当に迷惑が掛かったお客さんには車掌が車内放送でお詫びした程度(しかできない)
でもこの時でも
「訓練だから2分や3分の遅延は仕方がない」
と開き直る状態で、
「それならば駅で放送しろよ、訓練のために電車の発車や到着が2~3分遅れますって!」
と文句を言ったこともあるし、ベテランの運転士は完全にぶちギレて
「毎回毎回遅らせる訓練ならば電車が走っていない夜中にやれ!」
と言って監督職にスタフを投げつけたりもしていましたからね。
私も本数が少ない深夜か、終電後に訓練をすればいいだろうと何度も言ってきましたが今でも変わっていないようだし。
運転指令の見習もなかなか難敵でして。
ほとんどの人が列車無線の開局時の応答もまともに話せない。
※私もそうでした、運転指令の見習に就いた時は
それこそ移動局側から信号現示に関する問い合わせや、踏切の遮断桿折損の連絡なんてまずまともに答えることができない。
本当にあたふたするんですよ。
これだってきちんとした指示と正しい対処ができなければ、どんどん列車は遅れていきますからね。
ほかにも各駅の信号所で信号現示やポイント転換を操作盤の〝てこ〟を操作して行う駅扱いなども、列車の遅れをよく引き起こします。
列車の遅延を気にするあまりに大きなミスを犯して大事故になるよりは、遅らせてでも良いから確実な作業の方が絶対に良いのですが、でも最初から遅れても仕方がないという気持ちで見習や訓練に就くのはどうなのかなぁって思います。
それで遅延のことでお客さんに怒られるのは助役たち監督職ではなく乗務員や駅員ですし、乗務員は多客のために3分も遅れても事情聴取なんてのもありましたから、どうしても気持ちの部分では釈然としないのです。