側方監視
車掌は駅を出発するさいに顔を出していますよね。
あれは側方監視と言って、動き出した列車に異常がないかを見ているのです。
ドアに挟まれたままの人がいないか、挟まれて引きずられていないか。
動き出した列車に接触する人がいないか、お酒を飲んでいる人の中には千鳥足になって列車にぶつかる人もいます。
最近だとイヤホンをしてスマホの操作に夢中になり、列車が動き出していることに気付かず列車のすぐ脇を歩いている人や、スマホ画面を注視するあまりにまっすぐ歩けていなくて列車に接触する人もいます。
こういったことがあるので、車掌は列車がホームから進出するまで列車の側面を監視するわけです。
ちなみに、私がいた会社では側方監視とは言わずに出発監視と言っていました。
側方監視中に制帽を飛ばしてしまう
この側方監視のときにやってしまう車掌の恥ずかしい失敗。
それが制帽を飛ばしてしまうという失敗で、私も1度だけやったことがあります。
風が強かったりすると用心していますし、場合によっては片手で帽子を押さえていますから飛ばすことは案外少ない。
でも顎ひもを使う車掌は私がいた乗務区にはいなかったような。
とにかく、用心していないときにやっちゃうのですよ。
制帽が飛んでいく瞬間の被っている帽子がフワッと浮かぶ感覚。
人によっては、後ろから誰かがそーっと帽子を盗る感じとなんて言ってましたが、とにかく帽子が飛んでいく瞬間ってホントにフワーっと飛んでいくのですよ。
あまりにもフワーっと飛んでいくから手が出ないのです。
フワーっと浮かんで、帽子が全く頭と接しないようになって初めて
「帽子が飛んでる!」
って気付きます。
ちなみに私は車掌になった年にやっちゃいまして、それも25キロ以下のゆっくり走っている時に。
駅勤務時代によく遊んでくれていた大先輩がホーム案内係として立っていて、
※車掌に乗降終了の合図を手旗で送る業務に就いていました
「こんにちは!」
って言いながら手を振った瞬間に制帽が飛んで行ったのです。
すぐにその方が制帽を拾ってくれて、大笑いしながら手を振ってくれ……
マジで恥ずかしかったです。。。
制帽を飛ばすだけで大勢の係員を動かすことに
飛ばしてしまうとそこからは制帽なしでの乗務です。
普段は髪の毛がペチャンコになるし、お世辞にもキレイとは言えない代物で(油臭いというか…)被るのもイヤな制帽ですが、いざ制帽なしで乗務員室にいるとかなり居心地が悪い。
「乗客に何か言われないかな」
なんて変な気まで使ってしまいますしね。
私の場合はすぐに係員が制帽を拾ってくれたのと、支線だったので戻ってくれば受け取れるので無線で報告はしませんでしたが、通常は無線で報告して飛んで行った制帽の捜索を依頼します。
「○○駅で監視中に制帽を飛ばしました」
と入れる無線は乗務区だけではなく駅や本社にまで聞こえています。
それに対する運転指令の返答が
「〇〇列車の車掌、○○駅で制帽を飛ばした件了解、手配します」
運転指令からの無線は全列車の乗務員室で聞けますから、無線を入れた車掌に離合列車の車掌が笑いながら指を差してきたりするわけです。
もちろん帰区してからも車掌や運転士に揶揄われるし。
規則上、制服制帽を着用していなければ乗務員室へ立ち入ることはできません。
なので飛ばした制帽を捜索するのとは別に、私がいた乗務区では予備の制帽を持って助役が駆け付けてくれることになっていて、制帽を飛ばしただけでも数人の助役を動かすことになるなど意外と大掛かりなことに発展していました。
たいていの場合は飛ばした制帽は軌道内に落ちており、外観も油まみれになっていることが多いですし、続行の列車の接近のさいに風でさらに遠くへ飛ばされることもあるので、交換願を書くことになります。
1度飛ばせば制帽の被り方を工夫したり、顎を引いて制帽が浮き上がらないようにするなど用心しますから、ほとんど2度目はないものですが、中には学習能力がないのか何度も飛ばす人もいますが…
もう40年以上前に経験したことですが、今でも制帽が頭から離れて飛んでいくあの瞬間の感覚は抜けないです。