空転の際に起こることが多いオーバーロード(過負荷)
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空転の際に起こることが多いオーバーロード(過負荷)

運転士

雨天時の空転で起こるオーバーロード

雨天時に空転を頻発させちゃうことで起こることが多いオーバーロード(過負荷)

もちろん晴天時に起こることもありますが、雨天時のほうがはるかに起きやすい。

たいていの場合はオーバーロードになった場合、リセット操作(運転台の周辺にあるリセットスイッチを操作)を行うことで再び運転を継続することができます。

思いがけず過電流が流れた場合は車両のほうで回路を切断することで、それ以上の大きな電流が流れないようにして車両を保護しているといった感じですね。

車輪が急激に空回りした場合は電流が流れ過ぎてしまい、回路を切断してそれ以上電気を流さないようにするわけです。

この切断状態をリセットすることで再び通常の運行を行うわけです。

私が運転士になったころは、雨天時の空転によるオーバーロードの場合は勝手にリセットしていました。

それでも一応は2回目までは良いけど、3回目はリセットしたことを無線で運転指令に報告、そして4回目は運転指令の指示を仰ぐという決まりがありました。

ただ2000年に入った頃からは、私が所属していた乗務区ではリセット操作は必ず運転指令による許可が必要になりました。

ある形式の車両だけ雨天時はすぐ空転するので、暗黙の了解で回数制限なしでリセット操作をしていたのですが、それが原因で途中で走行不能になったことがあり、今では必ず報告となっています。

 

 

回生ブレーキでオーバーロード

中にはオーバーロードを引き起こしたために電車線が停電することがあります。

特に車両課が問題視するのは、制動時に起きるオーバーロードです。

私も1度だけ制動時にオーバーロードしたことが原因で電車線を停電させたことがあります。

その車両は私鉄ではおなじみの界磁チョッパ車で回生ブレーキ付き。

いつもと同じようにブレーキを入れると、アンメーター(電流計)の針がいつも以上に下がっています。

例えば回生制動でアンメーターの表示が-400Aが通常だとすれば、この時はその倍の-800Aくらいを指していました。

ただすべての駅でそのような兆候が出ていたのではなく、数駅に一回という感じで起きていました。

そしてある駅に停車のためにブレーキを入れると、何だか妙な前後の振動を感じて気持ち悪いなと思った瞬間に、

「ドカーーン!」

と大きな音と振動が伝わってきて、この時は本当に爆弾が爆発したのかと思いました。

運転台を見ると過負荷の表示灯が点滅しており、取りあえずは空気制動のみで駅へ停車させました。

すぐに運転指令から停電区間が発生していることが無線で流され、私が変電所を飛ばしたことが分かりました。

 

片肺走行

この時の運転指令の指示はリセットせずに運転継続。

リセットしなければ回路は切断されたままなので、オーバーロードした側のユニットには電気が流れません。

ユニット開放(ユニットカット)した状態と同じですから(厳密にはもちろん違いますが)

つまりはオーバーロードした側のユニットを使わず、生きているユニットだけで運転しろということです。

※ユニット開放NFBが乗務員室内にあるのですが、私がいた会社ではよほどのことがない限り使用しませんでした。

 

指示に従ってリセットせずにノッチを入れるも全く起動しません。

この時の編成には2つのユニットがあるのですが、両方ともがオーバーロードしてダメになってる?

それで運転指令に

「リセット操作せずにノッチを入れるものの起動しませんので、リセット操作して運転します」

と伝えてリセット操作後に運転再開。

起動して10秒ほど経過後に再び「ドカーーン!」という音が響き振動が伝わってきて、片側のユニットが不動になります。

当時は運転中の無線操作は禁止されていたのですが、

「再びオーバーロード発生、ユニット1が不動になっていますので、リセットせずにユニット2のみで運転を継続します」

と無線で運転指令に報告。

※ユニットは運転している側から近い順に1、2、3……と番号を付けていく、反対側の運転台で運転している時も運転している側から1,2,3……と順に付番する。

通常は4両のM車で運転しているところ2両のM車のみですから加速はメチャクチャ悪い。

でもこいつがダメになったら他車推進しなくちゃいけないのですが、それよりも早く運転取りやめになるであろう乗務区のある駅に到着させるべく、各駅の発車時には高加速スイッチを投入。

※高加速スイッチはこういう時に使うものです

片肺走行時に刻んでノッチを入れると負荷がかかりすぎるので、起動時には必ずフルノッチに入れておくことも必要です。

何とか車両課員や乗務区の助役が待つ駅までたどり着いて、私はお役御免です。

 

後で聞いたのですが、ダメになった側のユニットのうち1両は4つあるモーターのうち3つが、もう1両は2つが焼損してダメになっていました。

それに最初にオーバーロードした地点の枕木数本が、モーターからの火花によって焼け焦げていたようです。

 

ここまでオーバーロードの話をしてきましたが、過電流の話です。

オーバーロードには過電圧もあるのですが、私自身もそして私が乗務区に勤務していた30年以上の間に、私の周りでは過電圧によるオーバーロードは聞いたことがなく、過電圧継電器(OVR)の動作も聞いたことがありません。

知らないだけで起きているのかもしれませんが…

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