通過気笛・駅通過時の気笛合図
私が運転士になったのは1988年(昭和63年)で、その時にはすでに通過気笛は原則吹鳴しないことになっていました。
理由は近隣住民からの苦情です。
駅を通過する列車は規則によって気笛を吹鳴することになっていて、朝から夜中までずっと気笛の音を聞かされる住民にすればたまったものではない。
その後私がいた会社では規則から通過気笛は削除されました。
この通過気笛ですが上りと下りで鳴らし方が違っていて
上りは長短長(パーン、パン、パーン)で、下りは短長(パン、パーン)
ホーム上の旅客への通過列車接近を知らせる注意喚起の意味合いもあるのですが、駅係員などへ上り下りどちらの列車が接近しているのかを知らせる目的があって、鳴らし方を区別していました。
会社によってはこのような規則がなかったり、あっても鳴らし方が違うなど差異はあると思いますが、今ではどこの社局にもないのかな。
古い運転士の中には通過気笛にこだわり?を持っている人もいて、その鳴らし方で誰が運転しているのかが分かるという話を聞いたこともあります。
正直言って全通過駅で通過気笛を鳴らすのは面倒だろうと私なんかは思っていましたが、古い助役などに話を聞いてみると、
「あの通過気笛を鳴らすことにあこがれを持っていた」
という方々がたくさんいましたので、それなりのステータスシンボルではあったのかなと思います。
車掌の閉扉予告の手笛吹鳴
アイキャッチ画像に手笛(呼子笛)の画像を載せていますが、私が所属していた乗務区では、大半の車掌がひもを外してキーホルダーを付けていました。
笛だけをズボンの前ポケットに入れて、キーホルダーは外へ垂らしているというスタイルが定番で、私もそのスタイルで乗務していました。
この手笛ですがかなり響くし小さい割には音量も大きく、車掌がめいっぱい鳴らしたその瞬間に、真横を旅客が通過すると鼓膜が破れるほどの迷惑を被ることに。
なので車掌が吹く手笛はうるさいとの苦情が絶えなく寄せられていたし、駅によってはホームに並ぶように民家があって、その家が車掌台の真横という状態の家からは
「始発から最終まで人の家の横でピーピーと笛を吹きやがって」
という苦情は当然寄せられますし、
人間に対して笛で指示するなんて私は家畜ではない!って苦情を車掌時代に直接受けたこともありましたしね。
でも4両くらいならば十分先頭車両まで音は届きますが、地上駅でそれ以上の編成長になると難しい。
そこで車掌の中には車外マイクを使って手笛の音を先頭車まで届くようにする人もいましたが、なかなか乗降が終わらないことにイライラするのか、マイクをオンにしているのに手笛を思いっきり吹き駅中にとんでもない音量の音色を響き渡らさせて、かなりの苦情を貰うといったことも。
とにかく多くの苦情が入っていたので、こちらは〝原則〟手笛吹鳴の省略となりました。
今はその代りに発車標などを整備し、メロディと文字で発車を知らせる方向に変わっていますね。
早朝や深夜時間帯は音量を下げたり、駅によっては無音にして文字のみで知らせるなどして〝音環境〟への配慮をしています。
私が車掌の頃にはただ笛を思いっきり吹くのではなく、みんなそれぞれ工夫もしていました。
吹く息の量を変えて高音と低音を組み合わせたり、手笛を手で覆うようにして少しこもるような音にしてみたり、逆に響き渡るような音にしたりしてね。
すぐ横にお客さんがいるとき、あまり音が反響しない駅、やたら音が響く駅などなどその時の状況に応じて、みんな笛の音色を変えていたものですが…
手笛吹鳴も上り下りで吹き方が違っていた
会社による違いはあるのですが、私が車掌になった頃って上りと下りで手笛の吹き方を変える必要が規則上ではありました。
私が勤務していた会社では運転取扱心得(運心)にそのことが明記されていたのですが、誰もその通りに笛を吹かないので有名無実化しており、車掌になってすぐの頃に吹き分ける旨の規定がなくなりました。
今でも車掌が手笛を吹鳴する場合は長一声で手笛を吹くことが多いと思いますが、私が車掌になった頃の昔の規則には下りは長一声(ピー)で、上りは短長一声(ピッピー)と吹き分けることになっていました。
上りと下りのどちらの列車の閉扉予告なのかが分かるようにと区別されていましたが、それが分かるのは乗務経験のある社員などしかいませんから、あまり意味のない規則だったような。
車掌見習時代から規則通りの上りは短長一声の手笛吹鳴なんてしたことがなく(おそらく師匠もあまり理解していなかった?)、見習が終わり一人で乗務するようになってから少しだけ吹いていた感じでした。
今では上り下りでの吹き分けどころか、手笛吹鳴は省略(廃止)となっている社局が多いと思いますが、今でも車掌には会社が支給しているのかな?
私が会社を辞めるころ(2017年)はまず吹くことがない手笛でしたが、車掌見習で現場へやってきた時にダイヤや乗務手帳などとともに手笛も配布されていましたが。