かなり変わった伝説の運転士
今回の伝説の運転士は、私が車掌の時にも乗り組みましたし
私が運転士になって10年ほどは、同じ乗務区で運転士として働いておられた方の話です。
この方は一言では言い表せない様な、う~ん、簡単に言えば変としか言えないかな。
とにかく変わった方でした。
まさかのスタイルで電車を運転
運転士は運転席に座り、いつでも気笛を鳴らすことができるように、右足を気笛ペダルの上に置いておくことが基本となっています。
これは運転士の義務の一つに「気笛吹鳴義務」というのがあり、常に警笛を鳴らせる状態にしておかなくてはならないのです。
しかしこの伝説の運転士は気笛ペダルに足なんてのせていません。
だって運転席にあぐらをかいて座っているのですから。
いまの時代にこの運転士が乗務していれば、スマホで動画を撮られて拡散されて終わりでしょうね。
でも昭和の時代ってこの程度では苦情・クレームがくることはなかったのですよ。
何の確認もしないまま運転していた
ある時、あぐらをかいて電車を運転していると異変が起きました。
運転席から転げ落ちてしまい、デッドマン装置が作動して緊急停止したのです。
これも今じゃ懲罰の対象になるのですが、この伝説の運転士はスタフを確認していなかったし、場内信号機の現示も確認していなかった。
いつもまっすぐに進むから、この時担当していた列車もまっすぐに本線へ入場すると思っていた。
残念ながらこの列車は副本線へ入場する列車で、ポイント部分で列車は大きく右に揺られた。
45km/hの制限のポイントを、60km/hくらいで突っ込んだためです。
まっすぐ進むと思っていて急に右に振られ、さらに制限速度を超えてポイントへ進入したために、運転席から転げ落ちたのでした。
この当時の乗客は優しい方が多かったのでしょう。
運転士が転げ落ちる様子を一部始終見ていた乗客から
「大丈夫ですか?」
と声を掛けられたそうですから。
さすがにこの一件以降はあぐらをかいて運転することはなくなりましたが、その後もさまざまな伝説を残してくれたのでした。