運転指令は列車運行全体を把握し、運行管理や運転整理、乗務員への指示などを主な任務としています。
私も少しだけ助役をしたので運転指令の気持ちも分かるのですが、運転士をしていた期間が長い分どうしても運転士の肩を持ってしまいます。
だって運転士として勤務していると、運転指令に対して怒鳴りつけてやろうかと思うことがホントに多いですから。
指令では、この列車が遅れると全体に遅れが波及するという列車を何本かピックアップしています。
そういう列車は朝ラッシュの少し前に集中していて、出発の遅延だけではなく入換の遅延にも神経をとがらせています。
入換信号機が現示されて間髪を入れずに
「〇駅引上げ×番線の車両、入換信号機の現示に従って速やかに入換してください!」
おそらく運転指令所にあるパネルやモニターを凝視しているのでしょうね。
“この車両の入換が遅れたら全体に波及するのに!”
って思いながらね。
ある時いつもすぐに入換をするようにと催促される車両を担当していました。
※入換を行う場合は列車ではなく車両です
すぐに文句を言うことも分かっているので、無線で流される前にソッコーで入換作業を行おうと待っていました。
現示してすぐに入換を開始。
私にすれば
“文句を言う暇も与えてやらなかったわ”
って意気揚々に入換を行ったわけです。
すると無線機から運転指令が何やらざわついている様子が聞こえてきます。
実はこの時の入換は、出庫して本線上で停止してエンド交換の後ホームへ入線する作業なのですが、そのホームにはまだ電車が止まっていたために入線できないのです。
結局私が入換中だった車両を別の線へ入線させて、その作業終了後に止まっていた電車を出発させたためにそこそこの遅れが出たのです。
私が乗務区の休憩所に戻ると運転担当の助役が血相を変えて飛んできて
「お前の車両が入換したからとんでもない状態になってるやないか!」
と予想通りの文句を言ってきましたので
「指令やお前らが常日頃速やかに入換をしろって無線で流すからその通りにしただけ!」
「入換ルートの先に停車中の電車がいたのが分からんのか!」
「最初の停止位置からどうやって見るんや!」
ホーム上の待合室などが遮るので、最初の停止位置からは確認不可能なのです。
ついでに
「文句があるなら指令に言え!停車中の列車がいるのにこっちに対して入換をつけるのがおかしいのやろ!」
この一件以降しばらくの間、運転指令が入換や出発をせかすような無線を流さなくなりました。
あくまでしばらくの間ですけどね。
のど元過ぎれば・・・
この手の信号機の点け間違いって意外と多いのですよ。
入換信号機を点けなきゃいけないのに出発信号機を点けちゃって、それに釣られて出発した運転士もいましたし。
ただ入換や出発などは通常は列車運行管理システムで制御されているのですが、遅れが出そうな列車や車両に対しては手動介入することもあって、今回書いた入換も手動でつけたものだったのです。
列車運行管理システムで制御していても異線現示など信号の点け間違いって意外と多いですし、システムをどこまで信用すれば良いものか難しいところです。