1年間にどのくらい折られるんだろうと思うくらい、踏切の遮断機の棒(遮断棒・遮断桿・アームなどいろいろ呼び方がありますがここでは遮断桿とします)って本当に頻繁に折られます。
“踏切内で自動車が立ち往生しても、遮断桿を押して出れば脱出できる”
このことが広まったのも一因なのでしょうか。
踏切内に自動車が立ち往生してそのまま放置されて、なおかつ踏切の非常ボタンの押下が遅れて列車と衝突することを思えば、遮断桿を折ってでも踏切から脱出してもらうほうが良いのに決まっています。
また自動車が通行できる踏切には障害物検知装置が設置されていることが多く、非常ボタンを押す前に検知することは可能ではあります。
でもたいていの場合、遮断桿が降下を始めてから踏切内に侵入したり、ひどい場合には遮断桿が降りているのを無視して踏切に侵入することが原因で遮断桿が折れるのだろうと想像しています。
こんなタイミングで踏切に侵入し一定時間が経過してから障害物検知装置が検知したとしても、非常ブレーキを入れたところで列車が止まりきれるはずがありません。
最近の遮断桿は先端のほうや真ん中あたりから曲がるようになっているものがあります。
あまりにも折られる数が多すぎるから、頻繁に折られる踏切の遮断桿を中心にこのようなモノに替えているようです。
私が乗務していたころは、遮断桿が折られていることを発見した運転士が運転指令に報告し、その時点で踏切の交通整理と遮断桿交換のための係員が現場へ赴きます。
踏切は駅から遠いこともありますので、係員を乗せた列車はその踏切で列車を停止させて下車させます。
また運転指令は次に当該踏切に接近する列車に対して、徐行運転と遮断桿の折損状況を確認して報告するように指示を出します。
係員が当該の踏切に到着するまでは全列車徐行運転(昔は25㎞/h以下が指示されることが多かった)
係員が当該踏切に到着すれば徐行は解除されて通常運転に戻っていました。
これだとあまり遅れも出なかったのですが、最近は係員が当該の踏切に到着するまでは全列車一旦停止し、安全を確認してから15㎞/h以下で通過。
係員が当該踏切に到着後は一旦停止は解除されるも、15㎞/h以下で通過するように指示が出されると聞きました。
遮断桿が折れるだけでもいまは10~20分の遅れは必然的に出るようですね。
私が乗務していた時は遮断桿が完全に降下していない場合って、特に徐行なんてすることはありませんでした。
ところが最近は遮断桿が完全に降下していない状態が運転指令に分かるようになっているらしく、この場合も一旦停止ののち安全確認後15㎞/h以下で通過するように指示が出されるみたい。
お年寄りが踏切を渡っている最中に遮断桿が降下を始めた場合、それを見ていた親切な方が遮断桿が降りないように支えたりしますよね。
お年寄りが踏切から出たあと遮断桿から手を離すと、完全に降りきらずに通常より少し上がった位置で止まってしまいます。
これを検知してしまうらしいのです。
でも完全に降下しない原因で最も多いのは、自動車が踏切から退出する前に遮断桿が降下してきて屋根に引っ掛かり、そのまま出て行った場合ですね。
遮断桿が折れた場合の措置も、完全に降下しない場合の措置も、それぞれ安全サイドに立って改められたものです。
私が運転していたころは
「ダイヤをいかに乱さないようにするのか」
に主眼が置かれていました。
過去にも書いていますが、人身事故の際も今のように長時間にわたって運転を抑止するだなんてあり得ませんでした。
ところが東海道線救急隊員死傷事故で大きく風向きが変わり、福知山線脱線事故以降は
「ダイヤより安全」
に完全にシフトしてしまいました。
もちろん福知山線脱線事故を擁護する気なんてありませんし、あんな大惨事を現在の日本の鉄道が起こすなんて夢にも思っていなかったし、絶対にあのような事故が起きないように日ごろから努力するのは当然です。
しかし日常的に10分とか20分の遅れが出ても仕方がない今のやり方って、利用者のことは完全に無視していると感じてしまうのです。
もちろん安全は第一にするべきですが
何かおかしいような気がします。
鉄道各社の上層部の方々が、とにかくマスコミやSNSで非難されることだけを避けていればよい
そんな考えが透けて見えているような気がしてなりません。