軌道内作業を行っている作業員に対する警笛の省略
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軌道内作業を行っている作業員に対する警笛の省略

今から16年前の2006年1月24日、JR伯備線の根雨駅~武庫駅間で保線作業を行っていた作業員が特急スーパーやくも9号と接触、3人が死亡し2人が負傷するという惨事が起きた。

 

伯備線でのこの事故は、当該列車が新幹線との連絡のために15分ほど延発していたこと。

作業責任者には運転指令から同列車の遅れは伝えられていたが、すでに通過したものと勘違いしていた。

同路線は単線ですでに特急スーパーやくも9号は通過したと勘違いしていたので、見張員を逆方向の上り列車に対する監視位置に配置させた。

事故の概要はこのような感じです。

 

私が勤務していた会社では軌道内作業を行う場合には、作業個所から原則400m離れた位置に作業標識を掲出し、運転士は標識を確認すると警笛を鳴らすことになっていました。

これが単線の場合には作業個所の上下両方向に作業標識を掲出し、上下両方向に見張員を配置。

曲線部などでは必要に応じて複数の見張員を配置することになっていました。

 

保線作業の場合は作業個所がどんどん移動することも少ないので、わりとこのルールは守られていたのですが、これが電気や通信関係の作業となると移動作業となる場合が多く、作業標識はホーム端に掲出されることが多かった。

ただ運転士側も駅間のどこかでの作業だなと認識できるので、どこかに作業員がいるはずと思って運転するのでそれはそれで特に問題はありませんでした。

そして見張員を見つければ警笛を鳴らし、その警笛を受けて見張員は作業員に合図を出して退避させる。

退避が完了すれば運転士に退避完了の合図を送ってくるので、運転士は軽く1回気笛を鳴らす。

 

この作業員に対する警笛や気笛による合図が、沿線からの騒音に対するクレーム増加によって廃止されることになりました

見張員がきちんと仕事をしていれば問題ないという理論で押し切られた形です。

 

警笛をまだ鳴らしていた時代、警笛に気付いて移動作業を行っていた作業員は運転士に対して退避完了の合図を送ってきた。

ところがその合図を送ってきた作業員の退避場所が悪く、列車に接触して死亡するという事故が起きたことがあります。

運転士にしても退避しているとの認識があったので、非常ブレーキを入れたのは接触する本当に間際でしたしね。

※これはたしか公表されなかった

またあと1ヶ月ほどで警笛を省略するという時期に、私は作業員との接触を避けるために非常ブレーキを入れたこともあります。

この時なんて警笛を鳴らしているのに、作業員2名がフラっと線路内へ入ってきたんですよ。

こういう状況があっても作業現場では警笛を鳴らすなとの決まりが実施され、その決まりに背いて従来通りに警笛を鳴らした運転士は口頭注意の処分を受けるなんてこともありました。

 

軌道内作業を行っている方々の安全を守るという点からいえば、伯備線の事故はその教訓になるものだったわけですが、残念ながらクレームに負けて教訓を生かさないほうに流れてしまったことは、本当に残念だなと思いながらハンドルを握る晩年の運転士生活でした。

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