精算所の窓ガラスを強く叩かれて通声穴部分が壊されて飛んできた
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精算所の窓ガラスを強く叩かれて通声穴部分が壊されて飛んできた

今は運賃の精算って自動精算機に切符や定期券を入れて行いますが、私が駅勤務のころってまだ精算機の数がかなり少なく、ほとんどの駅は改札で精算を行っていましたし、大きな駅では精算所を別に設けて精算業務を行っていました。
私が勤務していた駅管区内には一駅だけ精算所を設けていた駅があり、事件はその精算所がリニューアルされた初日に起きました。

その精算所は窓口が2つあり、駅係員が2名並んで精算業務を行っていました。
リニューアル前は汚い小屋のような作りで、精算業務はすべて手作業。
運賃精算を暗算か電卓で行い、精算料金を受け取ってレシートを発行します。
レシートはエンコード化(裏面に磁気で情報を入力)されていないふつうの白い用紙だったので自動改集札機では対応しておらず、精算所の近くには有人の改札口を設けてエンコード化していない切符やレシートを所持している人はここを通るようになっていました。

 

 

リニューアルされた精算所には精算券発行機が置かれ、パソコンのキーボードくらいの大きさの操作盤に10円20円30円・・・と10円単位のキーが配列されて、精算した金額のボタンを押すと精算券が出てくるという、レシートをエンコード化された精算券に置き換えただけのもの。
暗算か電卓で計算してボタンを押さなきゃいけないので、精算所で勤務する係員の手間は大して変わらない。
ただ会社的には有人の改札口を閉鎖することができたので、人件費は浮いたでしょうけどね。

 

 

私は同期入社の人と一緒にリニューアルオープンした精算所の初日の勤務に入っていました。
精算券発行機の具合やら新しくなった精算所の様子を見に、本社のお偉いさんたち数名が私たちの後ろでしばらく様子を見ていました。
そこへ朝からお酒が入ってご機嫌なおじさんがやってきて、私の隣の同期生に声をかけてきます。

「〇〇駅までの帰りの切符・・・」

そのおじさんは精算所を切符売り場と勘違いしている様子でした。
後ろには本社のお偉いさん方がいますし、かなり丁寧に切符売り場ではなく精算所だということを説明する同期生。
でもそのおじさんにしてみれば精算所でも切符売り場でも何でもよくて、とにかく帰りの切符を買いたい、それだけだったのでしょうね。
いくら切符を売ってくれと頼まれたところで精算所で切符を発行することなんてできず、こちらとしてはここでは発行できないから券売機で買ってくださいとしか言いようがない。

 

 

ついにそのおじさんはキレてしまいました。

「切符を売れって客が言うてるだけやろ!」

おじさんは真新しい精算所のガラスを数発殴りました。
そのうちの一発が通声穴(声が聞こえるように穴を空けた円い部分)の所にヒット。
最近はアクリルの場合には通声穴を直接あけることもありますが、ガラスの場合ははめ込んで金属のフレームで押さえているだけ。
いとも簡単に通声穴をあけた丸いアクリルと金属のフレームが精算所内に飛び込んできて、後ろに立っていた本社の人の足元へ落ちました。

そのおじさんは改札にいた助役に取り押さえられて助役室へ連行。
精算所はリニューアルオープン後30分ほどで閉鎖となりました。

本社のお偉いさん方は

「ここでは切符は販売していませんと書いた看板を用意します」

それだけ言うと精算所から去っていきました。

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