まずは
これまで全電気指令式ブレーキの場合、ブレーキ4ノッチといった表記をしていることがありました。
ただ私が勤務していた会社ではブレーキの場合は4ステップといった言い方をし、力行(主幹制御・マスコン)については3ノッチという言い方をしていました。
またマスコンのことを現場ではノッチと呼んでいました。
あちこちのネット記事を見て今風の呼び名で書いてきたのですが、どうにもしっくりきませんので、これからは私が勤務していた当時の呼び名そのままで書かせていただきます。
では本文です。
電車が停車中にブレーキを掛けた状態でノッチを入れた場合(力行した時)、はてして電車は動くのでしょうか。
ブレーキハンドルを操作して常用制動や非常制動を掛けている状態の時、いくらノッチを入れたところで(力行したところで)電車は動きません。
ブレーキハンドルが全緩め位置以外にある時には力行回路は構成されず(力行回路が切れている)モーターに電気が流れないので電車は走ることができません。
ブレーキがブレーキハンドルの操作以外の場合、例えば予備直通ブレーキを停車中に動作させてブレーキハンドルは全緩め位置の場合、ノッチを入れると(力行すると)モーターに電気が流れるのでモーターは回転します。
予備直通ブレーキの力のほうが強ければモーターに電気が流れたとしても電車は動かない。
モーターの力のほうが予備直通ブレーキの制動力を上回っておれば少しずつ進んでいくことになります。
これは会社によって形式によって違いがあるとは思いますが、初期のVVVF車あたりになると予備直通ブレーキの制動力よりモーターの起動力のほうが強く、1ノッチでも徐々にですが進んでいきました。
昭和30年代に作られた車両では、予備直通ブレーキの制動力が勝っていて1ノッチでは電車は動きませんでしたが、2ノッチを入れたらさすがに動き出しました。
電車のブレーキって力行に負けてしまうのです。
実はこのことを知っていないと非常の際の処置を間違ってしまうことになるんですよ、
力行の回路が故障してノッチ(マスコン)をオフにしても電気が流れ続けてしまい、ずーっと力行状態が続いているとします。
ずっとモーターに電気が流れてどんどん速度が上がって・・・
ふつうの神経ならばとりあえずブレーキハンドルを操作して電車を止めようとするでしょう。
通常ならばブレーキハンドルを操作した時点で回路が切れてモーターには電気が流れなくなるはず。
でも力行回路が故障していてブレーキハンドルを全緩め位置以外にしても回路が切断されなければ、モーターは回転を続けるし、さらにブレーキのほうが弱ければ加速を続けることになりますよね。
それにブレーキが焼けてしまってまったく止めることができなくなる恐れも。
この場合は配電盤にある主幹制御や制御器のスイッチを切る、またはパンタグラフを下ろす処置をして、あとはブレーキハンドルでブレーキ操作を行って電車を緊急停車させるわけです。
こんなことは数十年に1回も起こるようなものではありませんけどね。
でも私が運転士見習のころは、この手の話を次から次へと聞いては覚えていきましたよ。
今の電車は製造後40年経っても故障は少ないと思うけど、製造後30~40年経過した昭和20年代や30年代の車両はいつ故障するか分からなかったですからね。