かなり以前に書いた記事なのですが、今でもアクセスがある記事の一つに「発煙の原因はブレーキ」があります。
都市部の電車では純電気ブレーキが採用されるなどして、車輪やブレーキディスクをブレーキシューで押し付けて止める空気ブレーキの活躍の場が少なくなっています。
純電気ブレーキでなくても高速域から中速域では電気ブレーキ(回生ブレーキ)をメインに使用しています。
空気ブレーキの使用割合が減ることでブレーキシューのすり減りが減少して交換回数が減ることもあるし、何より電気ブレーキのほうが制動力が安定するし、空気ブレーキより制動力も大きくなります。
※回生ブレーキの場合は条件によってはほとんどブレーキが利かないことも・・・
ただ地方で活躍する電車や気動車となるとまだまだ空気ブレーキに頼る割合が大きいです。
そしてブレーキシューを製造しているメーカーや鉄道各社では、気候に左右されずに安定した制動力が得られ、さらに摩耗が少ないブレーキシューの開発がいまも続いています。
今でも鋳鉄に何をどのくらいの割合で添加するかで頭を悩ませるわけですが、製作者サイド(メーカーさんと鉄道会社の本社や車両課など)と使用者サイド(運転士など)でなかなか意見の一致をみることができないって感じなんですよね。
制動力を極限まで高めることは今の技術なら容易だと思います。
でもそれを実際に車両に取り付けて使用したときに運転士が扱いやすいと感じるか、そして乗客に不快感を与えるものではない、といった部分はまた別の次元になっちゃいますからね。
ちょっと前振りが長くなりましたが
こうして今の段階ではベストだろうと思われるブレーキシューが誕生し、車両に取り付けて試運転を行います。
こういう時の試運転は当然ながら数人しか乗車していません。
そして問題もなさそうだし営業車両での使用が決定すれば、このブレーキシューが量産されて鉄道会社がたくさん購入します。
営業運転で使用を始めてから発覚することがあります。
例えば火花の問題です。
試運転の段階では確認されなかったのに、旅客を実際に乗せた状態でブレーキ操作すると火花が飛び散るということがあるんです。
もちろんブレーキ操作をすると必ず火花が散るというものではなく、旅客の人数(重さ)や速度や勾配など、偶然に合わさった原因によるものになりますが、試運転段階では起こらなかった現象が営業列車で起こることって多いです。
すでに購入したブレーキシューですし、別のブレーキシューを発注して納品されるまでに少し時間がかかります。
まさかブレーキシューなしで列車を走らせるわけにもいかず、火花が飛び散ることがあるとわかっていても使用するケースが出てきます。
すると同じ路線で続けて枕木から発煙・・・なんて事態につながっていくわけです。
ただ実際には、JRならば他の車両区にある従来型のブレーキシューを取り寄せて装着するでしょうね。
私鉄の場合は取り寄せることができない可能性があるので・・・
転轍機(ポイント)付近は油が大量に塗布されていることもあり、そこへ火花が飛ぶことで発煙することが多いのですが、意外と転轍機から離れた場所での発煙も多いようです。
おそらくですが
転轍機や曲線部付近に多量に塗られた油を車輪が引きずっていくことが原因の一つかなと想像しています。
あまりレールの内側をじっくり見る機会は無いと思いますが、油が付いて黒くなっている箇所って多いですよ。
転轍機周辺に塗布する油はすぐ弾くような性質のものではなく、どちらかと言うと粘性(粘り気)の強いものですから、引きずられてもレールにベッタリ付いているんですよ。