ボーナスが支給される時期以降の年末の乗務は・・・
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ボーナスが支給される時期以降の年末の乗務は・・・

車掌

お酒のにおいが車内に充満する季節

年末の勤務は駅勤務のころや運転士になってからもイヤだったけど、やっぱり車掌のころは本当にイヤでした。

毎年のことですが、ボーナスが支給される12月10日を過ぎたころからは忘年会が多くなるので、夜間時間帯の車内は常にお酒の匂いが漂っていました。

シートに横になって寝込む人もいれば、床で寝ちゃう人もいる。

そしてゲロする人ももちろんいます。

中には酔っぱらっているため行動の良し悪しが判断できなくなるためか、禁煙の車内でタバコを吸い始める人もいますし。

私の約30年の乗務員生活の中で一度だけ、網棚によじ登って横になり爆睡している酔っ払いを目撃したことがあります。

車内はかなり混んでいて、何とか吊り革を握って立ったまま寝ている人も多数いたのですが(そんな漫才?コント?がありましたが)、停車駅ごとに徐々に車内も空いていきお客さんのほぼ全員が座れるくらいになった時、酔ってはいないお客さんに指摘されたのです。

「こちらから3両目の網棚で寝ている人がいる」と。

仕方がなく様子を見に行くと、シートの横にカバンや靴のほか靴下なども並べて置いてあり、スーツを着たおじさんが裸足で爆睡しているのです。

下手に降ろそうとすると落下して危ないだろうし、無線を入れて応援を呼ぶことにしたのですが、

「網棚に登って横になり熟睡している泥酔者がいるので、応援要員の手配を」

と無線を入れてもなかなか通じず、

「どこで寝ているのですか?」

「網棚に登っているですか?」

結局その泥酔者は終点まで網棚で爆睡し、駅の係員が5~6名がかりで降ろすことになりました。

 

 

車掌だから対処しなきゃいけないし

通常はシートか床に横になっているわけですが、混雑いている車内状況の場合は起こさないと仕方がない。

なので無理やりにでも座らせに行きます。

他のお客さんからの申告があれば数両先でも対処しますが、基本は最後部の車両で車掌の目が届く範囲になります。

なので乗務中よりも折り返しで乗務場所の交代をしている時に見つけて、座らせることの方が多かったです。

横になって寝ている人がいれば他のお客さんの迷惑になることももちろんですが、どの程度酔っぱらっているかを確認するためでもあるのです。

終点に着いても起きなさそうかを事前に把握しておけば、後の対処が楽ですからね。

”そういえば〇両目にベロベロに酔った人が寝ていた“

と分かりますからね。

 

車内でゲロされた場合ですが、私が勤務していた会社では車掌は処置を行う道具は持ち合わせていません。

ノンゲーロみたいな処理剤くらいは持たせてくれても良いのではと思っていましたが……

なので対処法としては新聞紙を被せておくことだけ。

最近はビニールシートを被せることが多くなっていますが、ゲロの水分を吸い取って後の処置が楽なので、本当は新聞紙がベストなのですけどね。

だから昔は乗務員室には最低でも朝刊を1組くらいは積んでいました。

でも最近の乗務員さんはそういったことを知らないので、客室や乗務員室の新聞紙をすべて捨てちゃうようですが。

新聞紙を被せ、無線を入れて清掃員の手配をして、清掃員がおがくずをまいてほうきとちり取りで除去して、モップなどで水拭きという手順でした。

 

タバコを吸う人に対して

「禁煙です」

なんて言っても通じないばかりか、暴力沙汰になってしまいます。

だから私はいつも

「私もタバコを吸いたいけど我慢してるんですよ、お客さんも駅に降りるまで我慢してもらえません?」

これで大抵はタバコを消すのですが、中には食って掛かる人もいます。

そういう時は仕方ないので無線で応援要員の手配や、場合によっては警察の応援を仰ぐことになります。

 

 

泥酔者の接触事故

車内も大変ですが、ホーム上の酔払いには本当に気を使いましたよ。

列車を降りてホーム上を歩くのですが、酔っている人って白線(黄色の点字ブロック)と車両の間くらいの狭いスペースをよろよろしながら歩いて行くわけです。

なので動き出した列車の側面にぶつかってケガする人が一定数いました。

ぶつかる!と思って車掌弁(非常ブレーキ)を引いて緊急停止させたら、ヒョイとよけて白線の内側に逃げる人も多かったです。

「危ないと思ったから止めた」

と報告すれば今はOKです。

車掌が危ないと思えばちゅうちょなく列車を止めろと、口酸っぱく言われていますしね。

ところが昔は車掌弁を引いたものの接触しなかったら、運転士からも乗務区の助役からも

「その程度のことで、いちいち電車を止めるな!」

って逆に怒られるような時代でした。

ちなみに私がいた会社ではずっと、ホーム上で動き始めた列車の側面に接触して負傷した場合はホームで転んでけがをしたのと同様の扱い、つまりは運転上の負傷事故として扱っていなかったのですが、2012~3年ごろに警察から指摘されてようやく人身事故の扱いとするようになりました。

 

今ではホームドアの設置も関東を中心に進んでいますし、ホーム上での接触事故は減っていくでしょうね。

それにお酒を飲んだ人で最終電車までぎゅうぎゅう詰めだったのもバブルのころがピークで、その後はかなり減少しているようですし、昔よりは年末の乗務もマシになっているのかもしれないですね。

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