保安装置(デッドマン)をヘアゴムやテープで動作しないようにする
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保安装置(デッドマン)をヘアゴムやテープで動作しないようにする

運転士

デッドマンとEB

主に私鉄で使われている保安装置がデッドマンです。

運転士に急病など異変があった場合に直ちに電車を止めるための装置で、デッドマン=運転士の死とストレートなネーミングになっています。

マスコン(電車を起動させる装置で車で言えばアクセルに相当)に取り付けられていることが多いと思いますが、足踏み式もあるようです。

この画像の赤丸部分、マスコン上部の飛び出ている部分を押さえつけるように持っておくとデッドマンは動作しません。

この画像のマスコンは回して操作するタイプですが、手前に倒してくるタイプやマスコンとブレーキが一体化したワンハンドルタイプなどいろいろありますが、握っている間はデッドマンは動作しないというのは共通です。

 

デッドマンも会社によって動作条件が違うようで、力行中(マスコンを操作中)だけデッドマンが動作するとか、〇キロ以上で走行中は動作する、前後進レバーを中立位置の時は動作しないがそれ以外の時は停車中でも動作するなど、会社・形式ごとに違いがあるようです。

 

主にJRで使われているEB装置は、1分以上ノッチやブレーキ操作のほか気笛の吹鳴などを行わなかったときに警報ブザーが鳴り、ブザー鳴動後5秒以内にノッチやブレーキ操作、気笛吹鳴などを行うか、ブザーのリセットスイッチを押さなければ非常ブレーキが入るというものです。

 

 

ヘアゴムやテープで固定する

京急では2024年4月5日に、眠気によって手を放した際に非常ブレーキが入らないようにヘアゴムで留めて運転していたと4月19日に発表。

「1年ほど前から眠気がつらくなったときにやっていた。非常ブレーキがかかってお客様に迷惑をかけたくなかった」(読売新聞

 

JR西日本でも昨年同様のことが発覚して公表しています。

保安装置(EB-N 装置)が機能しない状態で列車を走行させた事象について

この件では腹痛に備えてテープで留めていた件と、指先に痛みを感じるので輪ゴムで留めていたとする2件があったようです。

よく聞く話としてマスコンに対してテープを貼っていた運転士も過去にはいましたし、ワンハンドルタイプのマスコンにはトイレットペーパーの芯を被せるとか、握力を鍛えるためのゴム製のハンドグリップがちょうどいいなんて話を他社の方から聞いたこともあります。

最近の指先で押さえておくタイプのデッドマン装置もかなり硬くて疲れると言った話も聞きますし、昔ながらの上から握るタイプのデッドマンも、一瞬だけ力を抜いて数ミリだけ握りが甘くなっても非常ブレーキが入る編成もあったし、運転士をしていると難儀な装置だなと思うことは多々ありました。

私はテープで貼り付けることが面倒だと感じていたので、いわゆる〝デッドマン殺し〟はしたことはありませんが、もう少し軽くしてくれたら運転も楽なんだけどとは思っていました。

 

不意に放してしまって非常制動

私が担当していた車両の話になりますが、

電気指令式ブレーキで不意にデッドマン装置が作動して非常ブレーキが入った場合、すぐにブレーキハンドルを非常位置へ持って行き、デッドマンを握り直してから緩めるとすぐに緩解していました。

ふと放してしまうことってありますから、やっちゃったと思った瞬間にすぐにこの動作を行えば、それほど大きなショックは感じないと思います。

 

ところが電磁直通ブレーキの場合はこううまくはいきません。

デッドマンを放した瞬間に制動管の圧縮空気を全て吐出するので、充気するまでは何をどうあがいたって非常ブレーキは緩みません。

100キロで走行中にデッドマンを放して非常ブレーキがかかってすぐに握り直しても、編成によってはそのままドスンと止まってしまうし、編成によっては歩くくらいの速度になってようやく緩解する感じでした。

 

駅に停車中は手を放しても大丈夫な車両が多い中(中にはいったんブレーキハンドルを非常位置に持って行く必要のある編成も)、古い車両の中には前後進レバー(レバーサー)を中立位置にしないと、停車中でもデッドマン装置が働く電磁直通ブレーキの車両がありました。

なかなか車掌がドアを閉めないので、ホームを覗くときに放してしまうことが多かったかな。

制動管の圧力が一気に抜けて非常ブレーキが動作するのですが、それに気付くのは一気に空気が抜ける時の“パシャーーン”という音ですね。

やってしまった!と慌ててデッドマンを握りなおして制動管に空気が込められるのを待つわけですが、これが相当長い。

駅の停車時秒は日中だと15~20秒が標準なのですが、そんな時間では充気しないですからね。

 

何が起こったのかを理解している車掌は、制動管が充気されるまでドアを閉めずに待っていてくれます。

非常制動が入る音と緩解される音を知っているから。

ところが中には関係なくドアを閉めちゃう車掌もいるんですよ。

ドアを閉めて発車合図を送ってくるけど、非常制動が緩まないから発車なんてできないのに。

それもなかなかドアを閉めないから何かあったのかなと思ってホームを覗き、その時に手を放してしまって非常ブレーキがかかっているわけですよ、だから、

「お前がダルイから覗いた時に手を放して非常ブレーキが入ったんだぞ!」

なんて頭に血が上ることもあったけど……

運転士を26年ほどした間に、たぶん5~6回はやっちゃった思い出です。

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