曲線部では極力ブレーキをかけるなとよく言われましたが
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曲線部では極力ブレーキをかけるなとよく言われましたが

運転士

昔の乗務区はまるで……

私が運転士になったのは1988年(S63)の春で25歳の時。

当時の乗務区には太平洋戦争勃発以前に生まれた乗務員も多くいましたし、助役や首席助役なんてそれこそ戦前生まれが多数を占めていました。

その影響からだと思いますが、その当時は本当におっかない人がたくさんいて、良いように言えば気骨があって俺が大将だと言わんばかりにどんどん指示を出す、逆に言えば言葉遣いも信じられないほど悪くて、本当にサラリーマンの集まりなのかと疑いの目を持ってしまう、そんな感じの乗務区でした。

嘘か本当なのかは知りませんが、よく○○首席の背中には和柄の刺青が入っているとか、車掌の○○さんの兄弟はその筋の人だなんてことが言われていましたからね。

本当に今でいうところの反社の集まりとか、軍隊と大差がないなんて私と同年代の人はみんなが口にしていましたから。

 

 

仕事にも厳しかったのですが

とにかく戦前生まれの監督職たちはみんなこわもての顔をしており、目つきも鋭くて本当に怖かった。

運転士になったばかりのころは初期添乗と言って頻繁に監督職が添乗しにくるのですが、たいていは比較的若い助役が来ることが多かった。

戦前生まれの監督職は軍曹という感じでしたが、戦後生まれの監督職は学校の先生という感じでしょうか。

基本的な運転操縦法の確認だけを見に来るので、見習中に習った通りの運転しかできない新人運転士に対してとやかく言ってくることはほぼありませんでした。

ところが軍曹のような監督職がたまたま添乗にきたりすると、基本的な操縦法以外のことを細かく言われることが多かった。

ベテランの車掌と乗組む際にはまず最初のあいさつを疎かにするなとか、それこそ自分よりも一つでも年上と乗組む際には必ず、乗組みの車掌が出勤申告を行うまでにあいさつを済ませておけとか、そういう細かいことをとにかく言われました。

そして駅に停車させる際には何があってもショックを残すなと、とにかくきつく言われました。

このタイミングだと思ってブレーキハンドルを全緩めにしても、その瞬間にちょっと早いとかちょっと遅いなんて各駅で言われたりして、それこそ見習中より厳しく言われるので本当にしんどかったです。

「ドスン!と止めたり、ピタッと止められずに転がっていたりしたら、車掌の機嫌を損ねるだろ!」

曲線部でブレーキを使うな!

もちろんホームが曲線上にある駅はブレーキを使わざるを得ないのですが(使わなかったらオーバーランしますから)、例えば下り勾配で曲線となっている箇所で制限速度を超えないようにブレーキをかけながら下っていくと、軍曹のような監督職にはメチャクチャ怒られました。

「曲線ではブレーキをかけるな!」

本当によく言われました。

乗り心地が悪くなるという理由もあるのですがそれ以上に

「カーブでブレーキを使うとレールが傷む」

ただでさえ曲線部では遠心力によって外側に向けて荷重がかかるのですが、そこでブレーキを使うとさらにレールが傷む。

だから曲線にさしかかる前に速度を落としておき、曲線部では転がして行けというのです。

ある下り勾配の曲線部の速度制限が80キロで、ブレーキをかけなければ30キロは加速するとすれば、その曲線にさしかかる前に50キロ以下に落としておけ。

そのためにはすべての下り勾配で、

「ブレーキをかけなければどの程度速度が上昇するのかを覚えておけ!」

ランカーブ(運転曲線)ではブレーキをかけながら下っていくことになっていても、

「それはダイヤ作成者が無知なだけだ!」

と言い切っていましたからね。

レールが傷むと当然レールの交換が必要になってくるのですが、

「運転士は電車を車両部から借りて、土木から借りたレールの上を走っている。借りた側が平気で傷めるようなことをするべきではない」

 

あとは軌道内作業を行っている作業員に対する警笛の吹き方もよく言われました。

「作業している人に対して、そこをのけ!と言わんばかりの警笛を吹くな。もちろん気付いていない時はその作業員の命を助けるために吹け!」

本当にいろいろと言われましたよ。

私が運転士になり数年のうちにそういった名物軍曹たちは定年を迎えましたが、そういう人たちが最後に添乗に来て、

「そろそろ運転士として独り立ちできそうだが、まだまだ勉強していけよ」

結局最後まで独り立ちできずに運転士生活を終えた気がします。

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