伝説の車掌‐3

過走(オーバーラン)なんて日常の出来事だった

私が車掌になったころは、所定の停止位置を行き過ぎて止まる過走の事案がごく普通にありました。
いまで言うところのオーバーランですが、私が勤務していた会社では今でも一応は規則上において
・出発信号機や列車停止標識を超えたとき
・閉塞信号機を最後部の車両の車軸が超えたとき
これ以外の時は運転士の判断でバックしても良いとなっています。
あくまで規則上の話で、最近の実際の運用では指令さんにお伺いを立てて、どういう処置を行うのか指示がくるのですけどね。

あの車掌の時は過走するな!

私が運転士になった頃も、まだまだ過走事案が本当に多かったですよ。
何せ運転士の研修の時には営業車でわざと過走して、正規の停止位置へ戻す訓練もごく普通に行われていましたから。
世の中もまだまだ寛容な時代だったのでしょうね、ホームから1~2両はみ出して止まったところで、さっさとバックして正規の位置へ戻せば文句を言う人なんていませんでしたから。

ただ研修中に運転士の師匠にしつこく言われたのは

「○○さんが車掌の時は、何があっても正規の場所へ止めろ!」
研修を終えて一人で運転を始めてからも周囲の運転士から

「○○のおっさんと乗組むときは滑ったら命取りだぞ!」
※滑る=ブレーキ操作を行ったけれども、所定の停止位置に止められなかったこと

 

運転士がとにかく突っ込むから

滑ってしまう運転士が多くいたのは、とにかく制動距離を詰めまくって止めようとする運転士が多かったからです。
通常は速度の2乗を20で割って出される数値を制動距離とします。
80㎞/hならば80×80÷20で320mを制動距離とするのですが、これの8掛けの250mで止めようとする運転士が多かったのですよ。
このころは常に全制動というのが定位でしたから。

でもブレーキの甘い車両や満員の電車だと到底止めることはできず、ホームから1~2両飛び出してしまうのです。
車掌がしっかりしていればドアを開けることなく運転士に後退の合図を送るのですが、○○さんは違っていました。
電車が止まればドアを開けてしまうのです。
信号待ちで駅間に停車中だったのにドアを開けたこともありましたから。

過走してホームを飛び出しているのにドアを開けて、乗客は駅に着いたと思って降りようとしたらホームが無かった。
「ホームが無い!」
って叫ぶ乗客もいたそうです。
それでもこの伝説の車掌○○さんは定年まで乗務していましたよ。
今では考えられないですよね。

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