忘れ物のこと-3
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忘れ物のこと-3

駅で勤務していたころはほとんどなかったのですが、運転士生活の晩年になって増加していったのが

「走行中の車内の忘れ物を車掌に探させろ」

という依頼です。

基本的に忘れ物を探すのは駅係員の仕事で、停車時間の関係から終点や停車時秒が長い駅に限定されます。

私がいた会社では、駅係員が優等列車の車内を停車駅で探すこともあったのですが、いかんせん停車時秒が短いためにピンポイントでしか探すことができません。

そのために“何両目のどのあたりの座席に忘れた”のかを正確に言ってもらうことが重要となります。

途中駅の遺留品捜索で見つからない場合は、次の停車駅や終点の駅の係員に捜索を依頼します。

そのことを伝えた場合、昔のお客さんは

「そうですか・・・」

で終わっていたのですが、どうにも最近の客は

「それならば車掌に探しに行かせろ!」

とか

「途中で盗られたらどうしてくれるんだ!」

とか

「見つからなかったら弁償しろ!電車に忘れたのは確実なのだから!」

みたいに脅してくるケースが多いようなのです。

だいたいね

忘れたやつが悪い!

ってことが抜け落ちているんですよね。

忘れ物は探しには行くけど、なくなってても電車屋さんの責任ではないから知らない

が本筋なんですよ。

 

私がいた会社では、車掌に〇〇駅で乗車するときに忘れ物をしたからと申し出があったとしても、車掌はそのお客さんに対して駅で申し出るように案内するのが鉄則でした。

たまに車掌がそのことを知らずに運転指令へ無線を入れたりすると

「駅の改札へ申し出るように案内してください」

と運転指令に一蹴されて終了でしたよ。

 

私の運転士生活の晩年でしたが、運転指令が走行中の車掌へ忘れ物を探しに行けという指示を出したことがあります。

その指令員はこのあと数回同様の指示を車掌に無線で入れています。

無線で指示されれば従わなきゃと思ったのか、実際に車掌が車内に探しに入ったことがありました。

この指令員はのちに上司にかなり怒られたようですし、当該の車掌に謝りに乗務区へやってきたそうです。

ほんの数回だったのですが、これが尾を引いているようでして

「前は探しに行ってくれたのに、なんで今回はダメなんや!」

「お前のとこの電車は車掌が探しに行くって聞いたぞ!」

上で書いた

「それならば車掌に探しに行かせろ!」

に続いてこのように言われるようなのです。

 

“車掌が探しに行けばいいんじゃないか?”

って感じる人が多いと思いますが

「壊れた」「中身が足りない」「盗っただろ!」

というトラブルに巻き込まれないためでもあります。

依頼を受けてすぐに探しに行ったとしても見つからないこともやはりありますしね。

そういうことがあるので、忘れ物に関してはすべて駅係員が対応するということになっています。

車掌が車内で忘れ物を見つけて駅へ届けただけなのに

「中身がなくなっている、その車掌がパクったに違いない」

って大揉めになったこともありますから。

 

 

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