前回の続きです。
駅間途中(踏切など)での事故の場合、車掌は現場に残って運転士だけで運転を再開します。
前回も書いたように事故現場から最寄りの駅まで徐行で運転して、車掌の資格を持つ係員を乗り込ませて運転を継続します。
あくまで車掌の経験がある係員ならば誰でもよく、駅係員でも車掌の経験がある人ならばOKです。
運転士は運転を継続しますが、多くの場合はできるだけ早く乗務区の助役などが添乗を実施します。
さすがに事故の直後ですから、平静に見えたとしても心中穏やかなわけがありませんからね。
運転士は行路表通りに交代の駅まで運転を継続することが基本です。
ただ事故車両は入庫させますので、車庫のある駅までの運転となることが多いです。
現場に残った車掌は、乗務区からの助役が来るまでは現場監視にあたります。
日中はカラスが近寄ってくるし、夜間はやっぱり気持ち悪し、一人で現場監視にあたるのは辛いと思いますよ。
たまにですが、乗務区の助役より警察官が先に事故現場へ到着することがあります。
別に問題はないはずなのですが、乗務区の区長以下助役連中は警察が先に来ることを嫌がっていましたね。
乗務区側としては先に現場へ到着して、できるだけ早く運転再開できるようにと現場を先に片付けたい。
ところが警察官が先に現場へ到着すると、できるだけ事故状況が分かるようにと状況の保全を要請されます。
すると運転再開までの時間に相当な差が出るんです。
ただ最近は現場検証や搬出などが行われるまで必ず運転抑止となるので、時間的な差はあまりないように思います。
乗務区の多くの助役は現場に着くと真っ先に、お線香を立てて手を合わせてから作業に取り掛かります。
ダイヤが滅茶苦茶になるなど迷惑を被ってはいますが、だからといってぞんざいには扱えませんから。
現場にいる車掌に列車の停止位置の確認をとります。
たいていは枕木の上やちょっと離れたフェンスなどのあたりにバラスト(砕石)を一個置いています。
助役はその場所を聞き取り、あとで報告書の作成の時に役立てます。
乗務区に戻った車掌に対しては、あまり長々と話を聞くようなことはありません。
車掌は事故が起きてからのことしか分かりませんから、聞くことがないのです。
まぁ事故の放送をきちんと行ったかなど、クレーム対策の色が濃いかな。
対して運転士は乗務区で事情を聞かれたうえに、報告書を作成します。
私が勤務していた乗務区では、報告書は運転士から聞き取りをしたうえで助役が作成していました。
この時に事故現場に置いた停止位置を示す1個のバラストが役に立ちます。
実はこの報告書に記載する事故当時の速度のほか、発見した場所や非常ブレーキを入れた場所は停止位置から逆算していました。
運転士経験のある方ならばご存じだと思いますが、運転理論で習ったあの訳が分からない計算式できちんと計算していました。
で、その報告書の数字を運転士は覚えておきます。
警察へ事情聴取で呼ばれることもあるので、その際にはこの覚えた数字を答えるのです。
これはウソかホントか分かりませんが、事情聴取を担当する警察官はたいてい若い人で事情聴取の練習を兼ねていた。
後ろに立っている指導役らしき警察官から、ここはこのように書くとか指導されながらの聴取が大半だった。
ちなみに警察での事情聴取は当日に行われることは少なく、たいてい数日後でした。
昔は人身事故を起こした列車の担当乗務員は、事故当日は乗務が免除されていました。
特にそのような規程はありませんでしたが、至極当たり前の判断だったように思います。
でもここ数年はすぐに乗務させようとする傾向が強かったように思います。
規程にはないのだかと乗務させるべきという意見のほうが強くなってきたためです。
※たぶん私の元職場だけでしょう。
会社によってはお見舞金みたいなのが出るそうですが、私の元職場では何も出ませんでしたよ。
乗務区に戻ってきたときにコーヒーを1杯もらえるくらいでした。
※私は助役時代なぜだかこのコーヒーを渡す役が多かった。ちなみにコーヒー代は渡す助役の自腹です。
運転士や車掌の同期生がいくらかずつ集めて、お清め代として渡すことはありましたけどね。