運転士や車掌といった乗務員をはじめ、ホームで業務に当たる駅員などもふつうは手袋をして作業をしています。
乗務員の場合は仕切り扉や側開き戸に手を挟んだ際に少しでもケガを軽減させるためだ、なんて車掌になったころ聞いたのですが、そんなに分厚い手袋ではありませんから仕切り扉や側開き戸で手を挟めば相当な大けがにつながりますし、下手したら指の切断という事態にもつながります。
実際に客室との仕切り扉で指を切断してしまった車掌が、所属していた乗務区で私が知る限りで3名ほどいましたから。
もちろん切断には至らなかった乗務員のほうが多いわけですから、薄い手袋でも少しは効果があるのかな。
運転士も手袋を着用して運転していますが、たまにほんの短い区間だけ手袋をせずに運転してみたりするのです。
するとね、いつもとは感覚がまったく違うから変なのですよ。
なんか気持ち悪いというか。
手袋をして電車を運転することが当たり前になっているし、そういう習慣が癖づいているから手袋なしでは運転しにくい。
車掌や運転士が乗務中に手袋をする理由ですが、習慣だからとか手袋をしていないと気持ち悪いとか、もちろん手を挟んだ時にけがを少しでも軽減させるためでもありません。
昔の電車って結構油汚れがひどく、乗務員室内の機器をさわるのに手袋をしていないと手が真っ黒に汚れるんです。
電磁直通ブレーキ(HSC)などのブレーキ弁ハンドルの柄は特に汚れていませんが、差し込む部分などは油を塗っていないと錆びついて動きが悪くなるので、グリースなどを塗布していたんじゃないかな。
車掌も車掌スイッチを触るだけならばそれほど汚れないでしょうが、乗務員室内のコック類はかなり汚れていましたからね。
ただ昔の運転士や車掌は今とは違って軍手を愛用している方が大半でした。
油で汚れている機器を触るのですからね。
ケガの軽減や油で汚れた危機を触るために手袋を着用する、というのも理由の一つではありますがもっと大きな理由があります。
それは異常時等の避難誘導の際には、素手で指示するよりも白い手袋を着用して指示するほうが効果が高いためです。
人間心理なのですが例えば警察官が素手のまま手を振るよりも、白い手袋を着用して手を振った方が注目してしまいませんか?
白い手袋をした駅員に乗り場を尋ねたとき、白い手袋でその方向を指差した方がどこか印象に残ると思うのです。
多くの旅客に対して少ない人数で指示を出すとき、白い手袋で進むべき方向を指差したり、または逆に進入させないように白い手袋をして制止するために手を広げるほうがやっぱり効果が高いのです。
列車内で何かトラブルがあり避難させるにしても、乗務しているのは運転士と車掌の計2名か運転士のみの1名ですからね。
ホームに立つ駅員にしても白い手袋をする理由は同じです。
でも運転士や車掌の中には黒く汚れた手袋を着用している人もいます。
替えるのが面倒だし、洗うのも面倒だし、ついそのままって感じでしょね。
私が勤務していた会社では、乗務員は月に2組の手袋が支給されていました。