私が車掌の見習だったころ-4

あまり報道されなくなったためか、保安設備が整ったためか、それとも運転中の意識の集中が高まったためかなのか。

過走(いわゆるオーバーラン)に関する報道が一時期のことを思うと少なくなっているように思います。

私が車掌の時代は過走なんて日常茶飯事で特に珍しいことではなく、報道はテレビとラジオと新聞だけという時代だったので一般に知られることはなかったですね。

もちろん電車をふだんから利用されている方は

「また行き過ぎたな」

って印象を持っていたとは思いますが。

とにかく頻繁に過走はあったし、停止位置を間違えて最後部の車両がホームに入っていないってことも頻繁に起こっていた時代。

車掌の見習も列車が過走したり手前に停車したときの対処方法を知っておく必要がありました。

 

 

車掌の指導員(以下 師匠と記します)と運転士が事前に打ち合わせをして、今日はどのような“訓練”をどの駅で行うのかを決めます。

たいてい訓練をすると決められている駅が近付けば、師匠はニタニタしだすんですよね。

そして訓練実施駅では、豪快に電車が本来の停止位置を行き過ぎます。

当然ですが見習にはそのような訓練が行われることは知らされておらず、抜き打ちでの訓練です。

見習は慌てるわけですが、その横で師匠はニタニタの度合いを増しながら

「さぁ、車掌はどのように処置をすれば良いのでしょう♪」

と見習に畳みかけてくるのです。

必死で過走した場合の車掌の手順を思い出しながら必死で対処していきます。

これと同様に、正規の停止位置より手間に停車したときの対処方の訓練も抜き打ちで行われるのです。

それもお客さんが乗車している営業車で。

 

 

もちろん会社側も見習だけを集めて試運転として列車を走行させて訓練はするのですが、誰だどの駅で過走したときの訓練を行うとか事前に決められているんです。

訓練ってそんな感じですよ、実際のところ。

なので自分の順番が回ってくるまでに台本(その日の資料)を読み込んで、その場で覚えて訓練に臨むわけですね。

ところが私が車掌の見習だったころは営業車を使って勝手に訓練をしていたのです。

まぁ会社が仕立てた訓練よりも、師匠連中が企てた抜き打ち訓練のほうが役には立ったと思いますよ。

お客さんが乗車している営業車ですから緊張感が全然違います。

 

ちなみに私が運転士になった頃は、まだこの抜き打ち訓練は行われていました。

車掌の師匠と打ち合わせをして過走や手前に停車する訓練をしたのは、たぶん平成3~4年頃が最後だったと記憶しています。

たとえ“訓練”だと称しても会社が認めたものではないので、もしもわざと停車位置を間違えた場合には正規の運転事故として処理するっていう通達が来たのですよ。

それ以降かな、過走しているのに車掌がドアを開けちゃったり、手前に停車しても知らん顔な車掌が増殖していったのは。。。

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