列車防護無線とエアセクションと乗務員
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列車防護無線とエアセクションと乗務員

先日(2022年5月16日)JR中央線の列車が東中野駅付近で防護無線を受けて緊急停車し、その際に車内灯が消えたことによる旅客のパニックのためか、ドアコックが操作されてドアが複数個所で開かれるなどしたために、運転再開までに50分ほどかかったという事案があったようです。

一部の報道では先頭車両の方からすごい勢いで逃げてくる旅客がいたとか、その様子から昨年の車内での事件を想起したことでさらにパニックが広がったとか。

車内で暴れた旅客がいて、周囲の旅客が取り押さえたといったことも報道されています。

報道を見ているだけでは何があったのか皆目見当が付きませんでしたが

  • 山手線の池袋駅で旅客がホームから転落する事故があり防護無線が発報された
  • 列車は防護無線を受信することで緊急停車(無線が届く範囲は1~2Kmと言われている)
  • 中央線の東中野駅付近の列車はおそらく緊急停車した場所がエアセクションの区間だった
  • 起動時に架線を断線する恐れが高いためパンタを降下
  • パンタを降下したたために車内灯が消灯
  • 車内灯が消灯したことで、おそらく京王線等での事件を想起しパニック
  • 逃げることを考えたのだと思いますがドアコックを操作しドアを開放
  • エアセクションの件やドアコック操作の件もあり運転再開まで時間を要した

こんな感じでしょうか。

 

防護無線は緊急時に周囲の列車への速報性が高く、関西の私鉄でも整備が続いています。

ただし無線が届く範囲の列車すべてが緊急停車するために、その影響はかなり大きいのも事実です。

今回は旅客がホームから転落するのを目撃した乗務員が防護無線を操作したようですが、おそらく会社側から躊躇なく操作するようにと指導されているでしょうから、JR東日本的には何も間違ったことはしていないということでしょうね。

ただ、ホームから落下する旅客を見ただけで防護無線を操作するというのは、個人的には疑問ですけどね。

本来はホーム上の駅員または旅客がホームの非常ボタンを操作すれば済んでいる話ですし、旅客の落下を目撃した乗務員は急気笛(短急数声)で危険を知らせる手段でも良かったような気がします。

 

防護無線を受けた列車の運転士は非常制動で停止しなければいけません。

このために場所によってはエアセクション内に停止してしまうこともあります。

本当はエアセクション内への停車は避けたいのですけど、緊急停止が優先されるので仕方がないですね。

 

車内灯の消灯はエアセクション内に停止したことで、起動時に架線を破断する恐れが極めて高いためにパンタを下ろさざるを得なかったのでしょう。

運転台で任意のパンタグラフだけを上げたり下げたりできれば良いのですが、降下ボタンを押すとすべてのパンタが下りますし、パンタ上昇のスイッチを操作するとすべてのパンタが一斉に上昇します。

任意のパンタの上げ下げが可能ならば、1つだけ上げた状態にすれば全車両の車内灯が消灯することは防げます。

昔の車両はパンタが上昇しているユニットのみ冷暖房を稼働させることができましたが、最近の車両は別ユニットの冷暖房の稼働も可能です。

 

ここからはパニックになった旅客への対応ですが、当該列車の車掌は車内放送などで適宜状況を伝えたのでしょうか。

車内放送に使用するマイクやスピーカーは蓄電池の電気を使用するので、パンタを降下し車内灯が消灯状態でも使用できます。

ほかには列車無線も使用可能ですし、蓄電池で点灯できる車内灯(予備灯の代替で一部の車内灯を直流で点灯できるようにしてある)ならばパンタを下ろしても点灯しますし。

急に列車が止まるわ、車内灯が消えるわでは、旅客がパニックになることは当然想定できることです。

こういう時運転士は運転指令とのやり取りを行うので、パニックにならないように鎮める役目は車掌の仕事です。

状況を繰り返し、しつこいくらいに説明の放送を行うことが必要なのです。

事件や事故ではないことをしつこいくらいに放送する。

車内灯が消えた理由も、故障などではなく任意でスイッチを切っていると伝える。

勝手にコックを操作してドアを開けてはいけないことを伝える。

この時点で運転再開のめどは立っていないとしても、あと少しで運転再開できそうなので静かに待っていてほしいことを伝える。

とにかく車掌は無言になる時間が無いほどに繰り返し放送し、旅客が冷静にいられるようにすることが最大の任務になります。

 

私が運転士をしている時にも感じていたのですが、普段の放送の時、乗り換えや停車駅の案内はくどいほど放送するのに、肝心な時は黙りこくる車掌が多いのですよ。

特に最近は自動放送の導入で放送する機会が激減していますから、余計に緊急時の放送ができない車掌が増えているのではないかな。

車掌はドア扱いにさえ気を付けておけば、普段の仕事はそれで十分かもしれません。

でも緊急時の対応ができないようでは、ワンマンの方が気楽で良いと考えてしまう運転士がもっと増えるでしょうね。

たでさえ会社は乗務員を減らすことばかり考えているのに・・・

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