空転で動けなくなった「くろしお」原因は車両?運転士?
広告が表示されます

空転で動けなくなった「くろしお」原因は車両?運転士?

2022年12月5日、新大阪発白浜行き特急「くろしお」3号が天王寺駅を9時19分に出発後、阪和線との合流部の信号機がR(赤)だったために停車。

G(青)に変わったのでノッチを入れて出発させようとしたが列車が進行してくれず、指令に連絡の上天王寺駅に引き返すというトラブルがあった。

天王寺駅の大阪環状線・関西線から阪和線への短絡線の勾配で動かなくなったようで、おそらく空転が原因ではないかということです。

過去の天気予報を見たところ当日は雨は降っていなかったようだし、「くろしお」3号の前に9時11分発の関空・紀州路快速が同じホームから同じルートで走行しているので、ちょっと頭をかしげてしまうのですが。

 

「くろしお」3号に使用されている車両は283系という車両で、6両編成で2M4Tと電動車(モーター車)が少ないそうですね。

つまりは電動車1両当たりの出力はかなり大きくなる。

それに車体も軽いでしょう。

するとどうしても車輪を回転させようと大出力のモーターがガンガン回ろうとするけど、車体が軽いために上から押し付ける力が緩くなるのでグリップ力が弱くなる。

そうするとどうしたって空転して前に進みづらい状態になるのでしょう。

 

車体を軽くして、電動車の比率を下げる代わりにモーター出力を大きくするというのは、一昔前によく用いられていました。

製造費用の圧縮と電動車の比率を下げることで電気代を抑えることができるし、モーターが少なくなれば検査項目がそれだけ少なくなって点検費用も安くなると、在職中に聞きましたが合っているかな?

ただし車体を軽くし、電動車を少なくしてモーターの出力を大きくすると、どうしても空転の発生割合は増加します。

また車体が軽いと惰行運転時に通常より速度が落ちていくのです。

1990年前後に登場した車両はこれらの傾向が強く出ていました(勤務先の車両だけかもしれませんが)

最近の車両は車体を軽くしても惰行走行時の速度の低下を従来車程度に抑えられているようで、私も運転士晩年にハンドルを握った新しい車両はよくできているなと思いましたから。

でも空転に関しては昔の抵抗制御の車両の方がはるかにマシではありましたね。

 

8分前に走行した関空・紀州路快速をはじめ、9時4分の特急「はるか」11号も同じ天王寺15番線から短絡線を通って阪和線へと合流しています。

阪和線との合流部で他の列車も停止したのかは分かりませんが、それでも各列車とも目的地に向かうことができています。

それで思うのですが、空転して動かないとか後ろに下がると感じた時に、運転士はどのようなノッチさばきをしていたのか、どのようなブレーキ操作をしたのか。

運転士をしている方は分かると思いますが、予想に反して列車が後ろに下がり始めると本当に怖いですよね。

その時に怖いし慌てるしで非常ブレーキを入れてしまうと、車両によっては次に起動するのが面倒なことになることがあります。

本当に車両によるのですが、ノッチを入れているのに前へ進まず後ろに下がりだすと怖くて非常ブレーキを入れる。

するとカムが元に戻っておらず、次に非常ブレーキを緩めてノッチを入れてもカムがなかなか元に戻らず、まったく起動できない状態になる車両があります。

後ろに下がって怖くても、運転士は慌てずに常用制動のみを使う。

また非常ブレーキを入れてしまったので、ノッチを入れてもなかなか起動しないときは例えば予備直通ブレーキを使う。

予備直通ブレーキを入れた状態でノッチを入れて、起動しだしてから予備直通ブレーキを緩めるなんて方法を使うのです。

車のMT車でサイドブレーキを掛けた状態で上手く半クラを使って坂道発進する、あの要領です。(ATしか運転したことがなかったら分かりにくいのですが……)

 

それと最近の運転士に多いのですが、すぐにフルノッチにまで入れる人が多いような気がします。

空転するときは2ノッチで粘って走らせるほうが列車は進行するのですが、いきなり高いノッチ段数に入れてしまうとどんどん進段するので車輪の回転数が上がり、空転してノッチが切断されてという状況が繰り返されるのです。

2ノッチだと直列の最終段で止まるので空転する回数はかなり減少し、速度は遅くても進むことができます。

ちなみに1ノッチを長時間入れ続けると、全抵抗投入状態が続くので熱を持ちすぎて危険な状態になります。

※私がいた会社の車両しか知りませんので、違っていたらごめんなさい

タイトルとURLをコピーしました