電車の蓄電池(バッテリー)が上がる(放電)すると

一般的に自動車やオートバイに搭載されている充電される電池はバッテリーと言いますが、なぜか電車の場合はバッテリーとは言わずに昔ながらの蓄電池と言っています。
電車の蓄電池って私自身数回しか見たことがありませんが、自動車用のバッテリーを何個か集めたような感じの大きさと見た目だったように記憶しています。
※一般的にはポケット式アルカリ蓄電池というものが使用されているらしいです。
自動車やオートバイでもバッテリー上がりを心配して配線を毎日外すなんてことはしませんよね。
1日や2日乗らなくてもバッテリーが上がる(放電)ことはまずありませんから。
もちろんランプ類の切り忘れによって放電することはありますが。
ところが電車の場合、留置のためにパンタグラフを下ろした場合には、必ず蓄電池のスイッチを切っておく必要があります。
特に冬季は一晩で蓄電池が上がってしまう(放電)ことも少なからずあり、蓄電池のスイッチの切り忘れは致命傷になってしまうことも。

 

例えばオートバイでバッテリーが上がってしまった場合、ミッション付のオートバイならばクラッチを切ってオートバイ走って押して、勢いがついたところでクラッチをつなげてエンジン始動をさせる押し掛けという方法があります。
さすがに電車を押してということはできませんからね。

自動車でもオートバイでも充電はエンジンを回し、エンジンに直結されているオルタネーターを回すことで行います。
一方一般的な電車では架線を流れる電気をパンタグラフから取り入れて、その電気で電動発電機(MG)を回して低圧の直流電源を発電するか、静止形インバータ(SIV)で低圧の直流電源に変換して蓄電池を充電します。
ということは、電車の場合はとにかくパンタグラフを上昇させてMGやSIVを使えば蓄電池に充電される、って思いますよね。
私もある事件が起こるまではそう思っていました。

 

 

最終電車として終端の駅に電車を留置し、翌朝別の乗務員がその車両を始発電車として使用することになっていました。
朝になって留置された車両のパンタグラフを上げようとスイッチを操作しても一向に上がりません。
昔の古い車両ならばパンタグラフを上昇させるのに圧縮空気を使っていたので、冬季は寒さのために空気が抜けてしまってということが頻繁にありました。
そういう場合はパンタグラフの降下状態を保つためのフックがあり、これを外すためのひもを引っ張ればOKでした。
ところが今回パンタグラフが上がらない車両は比較的新しい車両で、フックを外すのは電磁弁を使っていました。
そう、蓄電池の電気を使ってフックを外すのです。
これは蓄電池が上がっているなと見当を付けた乗務員は、電車の屋根に上がって手でフックを外してパンタグラフを一つ上昇させました。
※本当は電車線(架線)を停電しなきゃいけないのですが、そんなこと無視して・・・

 

パンタグラフが一基でも上がればMGに電気が流れ、蓄電池に充電されるはず。
そうすれば他のパンタグラフはスイッチの操作で一斉に上げられる、そう思っていたのです。
ところがいつまで経ってもMG(SIVだったかも)は起動しません。
起動しないから低圧の直流電源が得られず蓄電池は充電されないし、そのために列車無線なども使用できない状態だったのです。
仕方なく駅の鉄道電話を借りて所属する乗務区へ電話。
そこから運転指令や車両課などあちこちへ連絡して回ることに。
車両課の係員は大きなディーゼル発電機を持参して、電車の蓄電池の充電を始めたそうです。
その場にいた乗務区の助役が
「パンタを上げたのになぜMGが回らないのか?」
と聞いたところ
「MG(SIV)を動かすためには、低圧がないとダメなんです」
高圧の電流で動くMGやSIV,CPなどもそうですが、12Vの電源が流れないと起動しません。
これらの1500Vで動かす機器を停止させるのに1500Vが流れるスイッチを直接操作するのは危険すぎるから、12Vの低圧のスイッチが設けてあって、これを切れば機器は止まるようになっています。

なので蓄電池が上がれば(放電すれば)MGやSIVは起動しない。
パンタを上げたところで主な機器は動いてくれないのです。

ちなみにこの時はダイヤが大幅に乱れてしまい、留置の時に蓄電池を切ることを失念した運転士は処分されちゃいました。

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