予讃線の八幡浜駅では赤信号にもかかわらず列車を出発させた。
岡山気動車支所では入換信号を確認せずに起動させたために、安全側線へ入って脱線させた。
これらの件に限らず、信号を確認せずに列車・車両を動かしたうえでの事故がかなり増加しています。
予讃線・八幡浜駅
2023年9月19日12時30分ごろ、予讃線の松山発宇和島行き普通列車が八幡浜駅において、出発して約30mほど進行したところでATSが動作して停止した。
出発信号機がR(赤)にもかかわらずに出発させたためです。
出発時刻間際に乗車してきた人に気を取られてしまい、スタフに書かれた出発時刻だけを見て信号の確認を怠った。
同列車は上りの特急列車到着後に出発することになっており、まだ到着していなかった上り特急列車の場内信号機もR(赤)に落ちたために駅の手前で停車したそうです。
ATSが動作したから助かったものの、単線だったから衝突していた可能性もあり、普通列車の運転士の重大なミスと言えるでしょう。
岡山気動車支所構内
2023年9月23日15時40分ごろ、岡山気動車支所構内で出庫作業中の津山線の普通列車が脱線。
約24時間後の9月24日岡山15時着、岡山15時36分発から岡山~法界院間の運転を再開した。
岡山気動車支所から岡山駅へ出庫させる際いったん方向転換するのですが、その際に入換信号を確認せずに進行させたために本線側へ進路が開通しておらず、安全側線に入って脱線したようです。
本来は青矢印のルートで岡山駅へ向かいますが、進路が開通していない時は本線への支障を回避するために赤矢印の安全側線側に開通していたようです。
また運転士の話としてATSを入れていなかったという報道もありました。
略図配線.netの山陽本線(岡山~岩国)からお借りしました。
信号確認
八幡浜駅の事案ではATSが正常に動作したために自動的にブレーキがかかって停車した。
岡山気動車支所の事案では、本線(津山線)を走行する列車との支障を避けるために、本線側に開通していない時は安全側線へ進路が開通していた。
この2件ともに運転士が信号の現示を確認せずに列車・車両を出発・起動させたために起きた事案で、ともに運転士の重大なミスによるものです。
この2件に限らず、このところ信号を確認せずに列車・車両を出発・起動させる案件が多くなっており、ATSなどバックアップ装置によって大惨事には繋がっていませんが、ちょっと憂慮するべき事態になっていると感じます。
私が運転士になったころによく
「赤いものを見たら運転士は即座に反応するものだ」
「赤い衣類がベランダに干してあっても運転士はドキッとする生き物だ」
なんてよく言われました。
信号の青や黄よりも、赤に対してはより敏感に反応するものだし、反応速度検査で青や黄の時に赤を押してもあまり問題視されないけど、赤の時に青や黄を押したらかなりマズいとも言われていました。
入換信号機はR(赤)ではなく白色灯によって現示されるものが多いのですが、入換信号機や入換標識による運転の時って、本線路を運転する時以上の特段の注意力が必要です。
100キロ以上で本線路を運転する時よりも、車庫構内などを15キロとか20キロで運転する時の方がはるかに怖かった。
それだけに各地で起きている車庫構内等での脱線については、私は運転士の資質がない人が運転していたとしか思えなくて……
ワンマン運転が当たり前になり、確認喚呼を行う場面も昔よりかなり多くなるなど、運転士の作業は相当増加しているのも事実です。
でも信号を確認するという運転士にとって最も重要な作業が、あまりにもなおざりになっている気がします。
鉄道事業者側はとにかくたくさん確認喚呼や指差喚呼させれば安全が担保されると思っているようですが、そうすることで本当に重要な確認しなければならない事項が薄まっている気がします。
安全に運行するための確認喚呼や指差喚呼のはずが、ポーズのための確認喚呼や指差喚呼になっている気もします。
指差喚呼しているのに何も見えていない、そんな運転士もいましたしね。
とにかく
運転士の最重要で最優先するべき確認作業は信号確認です。